薬局に対するクレームや苦情…あなたなら、どう対応する?

薬局で薬剤師の頭を悩ませる問題の一つに、患者さんからのクレームがあります。クレーム対応は誰だって苦手意識があるものです。
悪いことばかりに思えるクレーム対応ですが、誠意こめて対応すれば患者さんの信頼を得るきっかけにもなります。
この記事ではまずクレームの原因にはどのようなものがあるのか解説し、その後クレームを言ってきた患者さんにどのように対応すべきなのか考えていきます。そして原因と対応を学んだ後、クレームが起こらないようにするために日頃から気を付けるとを提案します。
苦手意識を持っている方も多いクレーム対策への心構えができますのでクレーム対応に困っている方は必見です。
- 1章 よくあるクレームの原因
- 1-1 待ち時間が長い
- 1-2 説明不足
- 1-3 対応への不満
- 1-4 料金に対する不満
- 1-5 その他
- 2章 クレームへの対応
- 2-1 まずはお詫びをする
- 2-2 相手の心情を理解し、話を聴く
- 2-3 早急に事実の確認をする
- 2-4 解決策を提示する
- 2-5 クレームへのお詫びと感謝をする
- 2-6 クレームを共有する
- 3章 日頃から出来る対策
- 3-1 普段からコミュニケーションをしっかりとる
- 3-2 スタッフ間でのルールを統一する
- 3-3 一人で対応できない時のサポート体制を整える
- 3-4 どのようなクレームがあるのか把握する
- 4章 おわりに
1章 よくあるクレームの原因

薬局でのクレームにはさまざまな原因があります。この章では、よくあるクレームを原因ごとに分類して解説します。
1-1 待ち時間が長い
患者さんからのクレームで一番多いのは、長く待たされることへの不満ではないでしょうか。
冬場の風邪やインフルエンザのシーズンやお正月、お盆前などの長期の休暇の前には医療機関を受診する患者さんの数が増え、薬局での待ち時間も長くなります。
また、粉薬や軟膏の合剤や一包化など時間がかかる処方では後から来た患者さんの薬と順番が前後することもあるでしょう。「自分の方が先に来たのに」と不満に思い、クレームに発展することも少なくありません。
1-2 説明不足
薬局での説明不足があると、クレームに発展することがあります。薬剤情報提供書を見れば分かるだろうと詳しい説明を怠ると、患者さんが自宅に帰ってから薬の飲み方が分からなかったといったことになりかねません。
具体的な事例では、「毎食間」がいつに当たるのか分からず薬を飲めなかったというケースです。
処方された薬について分かりやすく説明し、患者さんに分からないことがある場合は疑問に答え、納得した上で薬を服用してもらうことが薬剤師の責務です。
1-3 対応への不満
スタッフが偉そうな口調だった、友達感覚で話をされた、質問した時に高圧的な態度で返されたなど、接客の態度が悪いとクレームの原因になります。基本的なことですが、十分に注意する必要があります。
また混雑時の対応は要注意です。十分な気配りができず、患者さんが不快な思いをした場合なども対応への不満が出やすくなります。
1-4 料金に対する不満
他の薬局となぜ値段が違うのか、という料金に関する不満もクレームに発展しやすいものです。
特定の医療機関からの処方せんの集中率や1カ月の取り扱い処方せん枚数で決まる調剤基本料のこと、基準薬局加算、服薬指導加算などに関することは、一般の人にはあまり知られていません。ですので、患者さんとしては「同じ薬なのになぜ?」と不満な気持ちになるのです。
また単純に、「薬の値段が高すぎる」という不満がクレームに発展することもあります。
1-5 その他
取り違えをして間違った薬を渡してしまった場合など、薬剤師側に非があるクレームもあります。
すでに服用している場合は健康被害が発生することも考えられます。処方せんを発行した医療機関にも連絡を取って迅速に対応する必要があります。
プライバシーが守られていないというクレームもあります。ブース型の窓口にするなどの対策を講じることが望ましいでしょう。
それが難しい場合は、服薬指導時の声の大きさに気を付けて話すだけでも状況はかなり改善します。
薬の在庫が不足して手配するまで待ってもらわなくてはならない時や患者さんが一度持ち帰った後に薬が足りなかったと言ってきた場合は要注意です。この時の対応が悪いとクレームに発展すること必至です。
2章 クレームへの対応

次にクレームへの対応の仕方について具体的に紹介していきましょう。患者さんとの信頼関係を崩さないようにするにはどのような対応が好ましいのでしょうか?
2-1 まずはお詫びをする
「そんなに待たせていないはず」、「薬が足りないなんて、そんなはずはない」などといった先入観は捨てて、患者さんの気分を害してしまったことや不信感を抱かせてしまったことをまずお詫びしましょう。
事実の確認に気が急く気持ちは分かりますが、まずは患者さんに誠意を持って対応する姿勢をみせることが大切です。
2-2 相手の心情を理解し、話を聴く
こちらに非がないと思っている場合は特に詰問口調や断言口調になってしまいがちですが、まずは患者さんの意見を聞くことが先決です。この時のポイントはただ話を「聞く」のではなく、注意して「聴く」ことです。
必要であればメモを取りながら、相手の話を理解するよう全力を尽くしましょう。最初は感情的になっている患者さんでも話を聞いてもらうことで、幾分落ち着きを取り戻すはずです。
こちらに主張があったとしても、この時点での反論は禁物です。
相槌を打ちながら聞き役に徹し、時折「~なのですね?」といった語り方で患者さんの意見を繰り返しましょう。そうしながら相手の話のポイントをしっかりとつかみ、患者さんの心情を理解していることを示しましょう。
まずは患者さんの話のポイントをきちんと理解したうえで、こちらの主張を伝えることです。ですが、主張の仕方にも気配りが必要です。
例えばこちらの主張が正論である場合でも、そのままぶつけてしまうと火に油を注いでしまう結果になるかもしれません。患者さんの気持ちを考えて、共感する姿勢を見せながら話を続けていきましょう。
こちらの事情で話をすることも患者さんの感情を逆なでしてしまうので避けた方がいいでしょう。
また興奮した患者さんへの対応のテクニックとして、会話に質問を取り入れることも有効です。患者さんとのやりとりを感情に任せた会話から、理性的な会話に切り替えることができます。
金銭的なことなど理不尽な要求をしてくるケースもあります。その場合は、あいまいな返事はせず、毅然とした態度でお断りすることが重要です。
2-3 早急に事実の確認をする
患者さんの話に耳を傾けた後にすべきことは事実の確認です。
「お釣りのお金が足りない」というクレームなら、レジを一旦閉めて、レジの中の金額と売り上げが合っているかどうか確認します。
「お薬が足りない」という方には、実際に調剤棚にある薬の在庫とコンピューター上の在庫が合っているか確認します。
混雑時ですぐに対応ができない場合は、後で照合して連絡することを必ずお伝えしましょう。
ポイントは、患者さんが納得できる形で事実を確認することです。
お釣りや薬の数を間違って渡していたかどうかよりも大事なのは、クレームを言われた時にどのような対応を取るかにあります。
こちらに非があることが明らかになった場合は速やかに謝罪し、誠意を持って今後の対応を考えなければなりません。
もし患者さんの勘違いであった時は「この薬局は私のためにここまでしてくれた」という気持ちになり、薬局へのさらなる信頼に繋がります。
このように、早急な事実の確認はクレームの解決には不可欠です。
2-4 解決策を提示する
クレームの中には、こちらから提案することで解決するものもあります。
「薬の値段が高すぎる」という方には、適宜ジェネリック医薬品に変更した時の差額などを提示して、おすすめをしましょう。
「待ち時間が長すぎる」という患者さんには、待ち時間を伝えて再来局をすすめたり、次回のために薬局が比較的空いている曜日や時間をお知らせしたりするといいでしょう。
またFAXでの処方せん受付サービスを行っている薬局では、次回以降の利用をすすめてみてはいかがでしょうか。
2-5 クレームへのお詫びと感謝をする
患者さんがクレームを言うのには当然ながら理由があります。言われた側はまず患者さんの思いを真摯に受け止めましょう。
薬局にとって一番危惧されることは、不満があるのにクレームを言わずに次回以降他の薬局に行ってしまう患者さんです。
それに引き換え、クレームを言ってくれた患者さんは、自分も嫌な気持ちになりながらも、胸の内を話してくれたということで、患者さんの言葉はいわば薬局を良くするための「助言」です。なので、薬局はクレームを言ってくれたことを感謝しなければなりません。
感謝の意を患者さんに伝えてみましょう。このことで患者さんの発言をネガティブなものからポジティブなものへと変換することができます。
クレームを言われた時にどのような態度を取るかで、薬局の信頼を失うか、またはよい関係を築き、さらには薬局のファンになってもらえるかが決まります。そのことを肝に命じてクレーム対応に当たりましょう。
2-6 クレームを共有する
クレームがあった場合は、情報を店舗全体で共有し、今後の対策などを話し合っておくことが重要です。対策をたてることはクレームがあった患者さんが次回に来局した時、誰に接客があたってもよい体制を整えるために必要なことです。
クレームの内容が重大な場合は、また同じクレームが起こることがないよう研修会などを実施し、解決するためのシステムを考える必要があります。
またチェーン展開している薬局では、もしもことが大きくなって本社などでの対応が必要になった場合でも、事が大きくなる前に報告しておくとスムーズに対策を取ることができます。
3章 日頃から出来る対策

この章では、クレームのない薬局を目指して日頃からできる対策について考えていきましょう。
3-1 普段からコミュニケーションをしっかりとる
コミュニケーションがうまく取れていない時にクレームは発生しやすくなります。クレームに発展させないためにはどんなことを実践すればよいのでしょうか。
3-1-1 待ち時間のお声がけを行う
最もクレームに発展しやすい待ち時間の問題の解決にはお声がけが有効です。だいたいの待ち時間が分かるだけでもストレスはだいぶ軽減されるものです。
混んでいる時こそ積極的にお声がけを行い、お待たせしていることをお詫びすると共にだいたいの待ち時間を伝えてみましょう。
3-1-2 薬の説明も基本からしっかりとする
薬剤師が知っていて当たり前と思うようなことでも、患者さんは知らないこともあります。
ですから、「こんなことは言わなくても分かっているだろう」という固定観念を捨て、丁寧な説明を心がけましょう。
初回薬がある時は特に注意し、患者さんがきちんと理解できているかを確認しましょう。必要ならば説明を加えなければなりません。
説明不足にならないよう、服薬指導を終える前に「何か質問はありますか?」と患者さんに聞いてみる習慣をつけましょう。
3-1-3 身だしなみや言葉遣いにも気を配る
クレームに発展する要因には身だしなみの乱れや立ち居振る舞い、言葉遣いなども挙げられます。
服装が乱れている人や乱暴な言葉遣いの人から服薬指導されたくないと思うのは患者さんの自然な感情です。このように患者さんからの信頼を得るためにはマナーも大切です。社会人としてのエチケットと心得て、好感の持てる身だしなみ、立ち居振る舞い、言葉遣いを心がけましょう。
また、薬の数が足りないというクレームがあった患者さんの投薬に当たる時は、いつも以上に気を付けて患者さんと一緒に薬を数えましょう。そして間違いないか確認し、患者さんに納得してもらってから薬を薬袋に入れるように徹底しましょう。
調剤基本料、基準薬局加算、服薬指導加算などが絡むケースに上手に対応するためには、「レセプト業務は医療事務の管轄」と丸投げにせず、調剤点数について勉強しておく必要があります。
「薬を渡すだけなのに値段が高い」という方には、まず薬物相互作用などによる副作用防止、重複投与防止の観点から患者さんの健康を守るためには服薬指導が必要である旨を説明します。そして患者さんに安心して薬を服用してもらうために薬剤師は服薬指導をしていることを、しっかり理解してもらいましょう。
また「他の薬局より値段が高い」という方には、どこの医療機関の処方せんでも受け付けられるという評価を受けた薬局であるゆえ、他の薬局よりも少し余計に加算が付くことなどを説明しましょう。
調剤基本料、基準薬局加算、服薬指導加算などの算定をクレームの原因にしないためには、ただ値段が高いだけではなく、その値段にはきちんと根拠があるということを分かりやすく説明し、納得してもらう必要があります。
このように日頃からそれぞれのケースにあった対策を取ることで、クレームの数は大幅に減らせます。
3-2 スタッフ間でのルールを統一する
感情的になっている患者さんに対応するのは大変なもの。ある程度経験のある人でないと冷静に対応することは難しいですね。
万一の場合に備えて、クレーム対応のためのマニュアルを作成し、スタッフ間での対応の仕方のルールを統一しておくとよいでしょう。マニュアルを頭に入れておけば、ある程度落ちついて対応することができますし、どのスタッフに当たっても均質な対応ができます。
ルールを統一することで、「あの人が言ったことと違う」などのさらなるトラブルを防ぐことができます。
3-3 一人で対応できない時のサポート体制を整える
なるべく大きな問題にしないようにと、1人でクレームに対応しようとするとうまくいかないことがあります。
クレームに一人で対応できない場合は、担当者の立ち合いの元、管理薬剤師や薬局の責任者など上に立つ人と共に解決への話し合いが必要な場合もあります。上司が対応するケースでも、たらいまわしもされたという印象を与えないため、担当者が最後まで責任を持って話し合いに立ち会うのが望ましいです。
チェーン店の薬局だと、大きな問題に発展した場合、本部と連絡を取りあう必要があります。また悪質な場合には、弁護士の介入も視野に入れなければならないでしょう。
薬剤師が一人で解決する力を身に着けることも大切ですが、いざという時に備えてこのようなサポート体制を整えておくことも重要です。
3-4 どのようなクレームがあるのか把握する
様々なクレームに的確に対応するには、どのような種類のクレームがあるのか、あらかじめ把握しておくことが重要です。店舗の立地などによってクレームの種類も変わってきますので、その店舗にあった対策をとる必要があります。
日頃からスタッフ間でクレームに関する話し合いを持つようにし、それを元にクレーム対策マニュアルを作成するとよいでしょう。
4章 おわりに
クレームは、人間同士のコミュニケーションがある限りなかなかゼロにはできません。ネガティブな感情が伴いますので、目を逸らしたくなる問題でもあります。
しかし、クレームの問題への取り組みは患者さんの薬局への満足度を上げるキーポイントであることは確かです。
薬局が接客業という一面を持つことを忘れず、ぜひ前向きに取り組んでみてください。


