ツルハグループ – 健康サポート力、会話の中からの判断力を磨いて日本一の薬剤師集団を目指す【月刊MD】 – 薬プレッソ

ツルハグループ – 健康サポート力、会話の中からの判断力を磨いて日本一の薬剤師集団を目指す【月刊MD】

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ツルハグループは国内で1,667店舗を展開し、そのうち385店舗が調剤薬局を併設している(2016年5月現在)。
早くから薬局において重要なのは「かかりつけ薬剤師」であるとトップが公言しており、
薬剤師の役割に関しては、終始一貫したポリシーを持っている。
調剤報酬改定を機に、現在の取組みと今後の方針について、グループの調剤薬局を統括する
ツルハホールディングスの後藤輝明取締役常務執行役員に聞いた。

▼目次

調剤報酬改定への対応

法律で役割を規定されるのは薬剤師にとっては恥ずべきこと

2016年の調剤報酬改定で、厚生労働省は、かかりつけ薬剤師の要件を明確に規定し点数まで設けた。この改定に関して後藤氏は次のように語る。

「いまから10年以上も前から当社の会長(鶴羽樹会長)はかかりつけ薬剤師という言葉を使って、その重要性を説いていました。それが最近になってかかりつけ薬剤師という言葉が急に注目されている。調剤報酬改定で定められているかかりつけ薬剤師の算定要件は、薬剤師なら当然やるべきこと。それを法律で決められているというのは、薬剤師がそれをできていなかったからです。薬剤師はこれまで自覚がなかったことを恥ずかしくおもったほうがいいでしょう」(後藤氏以下同)

後藤氏は、医師に対して「かかりつけ医」の要件がないのに、薬剤師にあるのは医療人としての自覚不足に原因があると指摘する。また、薬局の開設許可は、調剤業務だけを対象としたものでなく、薬剤の情報提供や利用者の健康を幅広く守ることが条件であり、医薬分業により処方せん薬を「調剤」することが肥大化したことに問題があるとも指摘する。

薬剤師が専門性を発揮することで、薬剤の適正な処方と医療費抑制を目的に始まった医薬分業だが、ビジネスとして「儲かる」調剤業務だけが薬局業務から切り離され、独り歩きしている感も否めない。組織力を背景に政治力も行使しながら、調剤業務の産業化を進めた職能団体にも、薬局の機能不全を招いた責任の一端はあるだろう。

調剤報酬改定が目指すのはまちの薬局への原点回帰

医薬分業率がまだ低く、調剤業務の割合が小さかった頃の薬局はまちの健康相談ステーションだった。薬剤師は商店街の中で「先生」と呼ばれ、病気予防のことから食事や栄養、生活指導まで地域の生活者の健康相談に幅広く乗っていた。

「薬局は『局』というぐらいですから、薬、健康に関するひとつの機関なのです。昔の薬局は、病気の相談、OTCの販売、栄養アドバイス、あるいは受診勧奨など、相手の状況によって、さまざまな対処法を講じていました。もっとも身近な健康に関する相談場所だった。厚労省は薬局にもう一度原点に返るよう望んでいると推察されます。今回の改定にはそのメッセージが込められているとおもいます。

最近ドラッグストア(DgS)は店舗数が増え、家から近い場所で営業する店も増えました。こういった状況も、身近な場所で相談できる、昔の薬局へ回帰するには好条件です」

ツルハグループの対応と取組み

患者からの申し出に応じてかかりつけ薬剤師が対応

今回の調剤報酬改定に伴うかかりつけ薬剤師に対して、ツルハグループではどのような対応をするのだろうか。在宅調剤に関する考えと合わせて聞いた。

「基本的には患者から申し出のあったときのみ、かかりつけ薬剤師として対応します。可能性があるのは、認知症患者、在宅医療の患者が多いのではないでしょうか。料金も発生しますし、こちらからすべての患者を対象に署名をもらってかかりつけ薬剤師を取りに行くことはしません。相手の状況や希望に応じてケースバイケースで判断します。

在宅調剤に関しては拠点化を考えています。すべての薬局に在宅専任の薬剤師を配置するのは難しい状況です。在宅に注力できる拠点を設けて、その薬局では在宅を担当する薬剤師を複数名置いてしっかり対応したいとおもっています」

行政との協働による健康サポートサービス

ツルハドラッグでは、札幌から東に30kmほどに位置する岩見沢市で行政と協働して市民の健康サポートを行っている。具体的には、ツルハドラッグ岩見沢大和店店頭で、体組成、体重、血圧、骨密度や自己採血による血液検査などさまざまな健康測定を行い、それらのデータを市が管理するサーバに保管。保管されたデータにはツルハのポイントカードからアクセスすることができる。これに加えて健診結果やレセプトデータなどの情報もポイントカードに一元化し、そのデータを見ながら薬剤師、管理栄養士が健康アドバイスすることを想定している。

将来的には医療機関でもツルハのポイントカードから健康データへアクセスすることが視野に入っており、近所にあるDgSが生活者の健康管理の窓口となるモデルが構築されつつある。

岩見沢市は人口8万4,370人、高齢化率は32.89%、人口は平成25年と28年比で96%と減少傾向にある。高齢化、人口減が進むまちの典型である。行政も社会保障費の抑制には積極的で、ツルハとの協働もその延長線上にある。

「国も地方も予算に占める社会保障費は大きい。財政が破綻しないためにも健康寿命の延伸は重要課題で、薬剤師には大きな役割が期待されています。岩見沢市との取組みが成果を挙げれば、これがひとつのモデルとなり、ほかの地域へも展開できます」

自己採血健康診断など幅広い健康サポートを展開

ツルハグループでは、健康ライフコンパス(株)と提携して自己採血による健康診断を店頭で受け付けている。定期的に健康診断を受ける環境にない人たちから大きなニーズがあり、2010年の3店舗から始まり、現在全国201の店舗で実施中だ。

岩見沢市では、公民館など地域の集会場に薬剤師が出掛けてその場で自己採血による健康診断を行っており、こちらも、主婦など多くの利用者でにぎわっている。薬剤師が積極的に外に出る活動の一環でもある。

最近の取組みとしては、高齢者が肺炎をはじめ、さまざまな病気を引き起こす原因になる口腔内の細菌を、小型カウンターで測定するサービスを始めた。細菌の数によりレベル1からレベル7までに分類され、細菌が多い場合には肺炎などの発症リスクが高く、歯磨き、舌磨きなどの口腔ケアが必要となる。測定に要する時間は1分ほどである。店頭の一角にスペースを設けて行う。

問われているのは薬剤師の健康サポート能力

このような幅広い健康サポート施策の背景には、次のような後藤氏の理念がある。

「薬剤師は調剤だけをしていればいいというものではありません。大事なのは地域の人の健康を守ること。会話を通じて、相手に必要なものは何か、OTC薬か、栄養指導か、生活指導か、医療機関での受診か、それを見極める、ジャッジする能力が薬剤師にもっとも求められることです。

調剤報酬改定で点数が変わったなどということが問題なのではなく、いま問われているのは、薬剤師が調剤以外でも地域の人の健康を守るために貢献できるかということ。もし、できなければ、世間では『薬剤師不要論』が湧き起こるでしょう。世論が高まれば、政治が動いて制度が変わる。すべての薬剤師はいまが正念場だと心得て努力すべきです」(後藤氏)

ツルハグループでは、健康サポート、対人業務の時間を増やすために、調剤の機械化を進めている。また、教育・研修にも注力して、さまざまな研鑽を積むことで「日本一の薬剤師集団になろう」を合い言葉に活動している。

後藤氏が懸念するように、薬剤師は世論からは最近逆風に立たされている。一方で、健康寿命延伸や在宅医療での活躍が期待されていることも確かだ。

逆風に押し返されるのか、追い風に乗るのかは薬剤師の自覚と行動にかかっている。

株式会社ツルハホールディングス

本 社/北海道札幌市東区 北24条東20丁目1-21
代 表/代表取締役社長 堀川 政司


月刊マーチャンダイジングの発行元である株式会社ニュー・フォーマット研究所および関連取材先の許可を得て、転載しております。

転載元:月刊マーチャンダイジング 2016年7月号 16~17ページ
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薬プレッソ編集部

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