薬剤師の年収はどれくらい? ほかの医療従事者と比較してみよう(2020年度版) – 薬プレッソ

薬剤師の年収はどれくらい? ほかの医療従事者と比較してみよう(2020年度版)

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どこの職場でも同じだと思いますが、意外と同僚の給料は知らないものですよね?
なかでも病院は、働く人によって年収に大きな開きがあります。
医療従事者は高年収というイメージがあると思いますが、実際はどうなのでしょうか。

1.薬剤師の年収・働き方

薬剤師の年収

薬剤師の年収ときいて、いくらくらいを想像しますか。
その答えは、「第22回医療経済実態調査の報告」という厚生労働省の資料でわかります。
これは社会保険の診療報酬に関する資料の整備を目的としており、医療従事者の職種別の平均給与も調査されています。
一般病院の場合、薬剤師の平均給与は以下の通りです。

平均給料 4,449,610円
賞与 1,137,685円
合計 5,587,295円

調剤薬局の場合、薬剤師の平均給与は以下の通りです。なお、管理薬剤師の給与も含みます。

平均給料 5,021,290円
賞与 630,914円
合計 5,652,205円

薬剤師は調剤薬局・病院・ドラッグストアだけでなく一般企業や公務員といった働き方もあるため、平均年収といっても職種によって差が出てきます。

薬剤師の主要な働き先である調剤薬局は、全国に59,613施設もあります。(厚生労働省「平成30年度衛生行政報告例」より)
これは、全国にあるコンビニよりも多い数です(JFA「コンビニエンスストア統計調査月報」によれば、全国のコンビニの店舗数は2020年5月時点で55,769店舗)。
誰しもコンビニを探すという経験があると思いますが、数だけでいえば薬局はコンビニよりも見つけやすいということになります。

病院も薬剤師に人気の勤務先です。
病院は全国に8,372施設(厚生労働省「平成30(2018)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」)、大きな一般診療所も薬剤師を置く義務があるので、多くの薬剤師が病院で働いています。

また、製薬会社やドラッグストアといった一般企業も主要な勤務先となります。
製薬会社でも、働き方はMRや創薬研究者に分けられます。
果ては麻薬取締官という、一見すると薬剤師とは結びつかないような職業まで選択肢に入ります。

薬剤師の多様な働き方については、「薬剤師だけの多様な働き方」で詳しく解説していきます。

6年制になった薬学部

薬学部は2006年度より6年制に改められました。
これは、薬剤師に求められる能力が高くなったことが背景にあります。
また、薬学部も臨床実習があり、これに臨むには各種試験を突破する必要があります。
薬学部は総じて実習や演習が多く、並行して卒論や臨床実習、国家試験に向けた準備が必要となるので忙しい学生生活となります。

薬学部の卒業までには、私立大学でおよそ1,000万円から1,500万円、国立大学では約350万円の学費が必要となります。
ちなみに6年制に延長された分、卒業後の給与は大学院卒と同水準で扱われることが多いようです。

6年制の導入により、国家試験の合格率が低下?

薬剤師は2006年より6年制が導入され、2012年に初めて6年制卒の学生が国家試験に挑みました。
それでは、6年制に移行してからの薬剤師国家試験の合格率を確認してみましょう。

国家試験の合格率は、2012年88.31%、2013年79.10%と2年連続で高い推移でしたが、2014年60.84%、2015年63.17%と急激に落ち込みました。

厚生労働省は『特別に問題を難しくしたわけではない』と発表しており、学生の質が低下したことを原因として挙げていました。しかし、2016年以降は再び合格率が70%台にまで上昇しているため、必ずしも「6年制の導入によって合格率が低下した」というわけではなさそうです。

薬剤師だけの多様な働き方

厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和元年7月分)について」を見てみると、「医師、薬剤師等」の有効求人倍率(パートを除く)は約4.47倍と非常に高いことがわかります。
前年同月と比較すると下がってはいるものの、「一般事務の職業」で0.34倍ですから、依然として高い有効求人倍率であると言えます。

この背景の一つに、薬剤師の資格保有者の半数が女性であることが挙げられます。出産などを機に一時的な人手不足が発生しやすく、需要が高まります。

有効求人倍率から考えると、薬剤師はほかの職業と比べて「就職や転職がしやすい」と言えるでしょう。
この章では、そんな薬剤師がなれる多様な職業について紹介していきたいと思います。

薬剤師が選べる一般的な職業・職場

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調剤薬局で働く薬剤師
医師から発行された処方箋を受け取り、薬を調剤して患者さんへ渡すことが主な仕事です。
ほかにも、老人ホームや介護施設などへ訪問して、薬の飲み方を指導するといった役割もあります。
薬剤師の半数以上がこの調剤薬局に勤めています。
それもそのはずで、調剤薬局は全国で58,000件以上あり、その数はコンビニよりも多いのです。
また、調剤施設のあるドラッグストアも開設されており、薬剤師の勤務先の多さを物語っています。

どうしてここまで薬局の数が増えたのかというと、国が推進した医薬分業が理由にあります。
医薬分業とは、医師による診療と薬剤師による調剤を分け、それぞれの専門家に任せることで効果的な薬物治療を目指すものです。

なお、調剤薬局の平均年収は、約565万円です。

下記に紹介しますが、給与面はドラッグストアのほうが優っています。
調剤薬局とドラッグストアのどちらを選ぶかは、主に勤務時間と収入のどちらを優先するかによって分かれるようです。

ドラッグストアで働く薬剤師
最近、調剤施設のあるドラッグストアが増えてきました。その分、薬剤師の需要も増えています。
しかし、なぜ調剤施設を併設したドラッグストアが増えたのでしょうか。実は薬の販売に関する法律も日々変わっており、企業間の競争のなかでこの形態は生み出されたのです。

2009年の改正薬事法によって医薬品販売の制度が変わり、スーパーやホームセンターなどが医薬品販売へ参入しました。
ドラッグストアは調剤のできる店舗やコンビニと提携した店舗といった新業態を作り、これらの新規参入に対抗したのです。

調剤施設のあるドラッグストアの強みは、市販薬やサプリメントを含めた健康指導を行えることです。日用品を含めた商品の品揃えの豊富さから、薬剤師としてのやりがいを感じにくいという意見はあります。
しかし今後、政府によって推進されていくセルフメディケーションのなかで、もっとも身近に患者さんと接していく職場になる可能性があります。

ドラッグストアの年収は、多くの企業で600万円以上得られることが多いようです。
もちろん、企業によって差はあるので、ドラッグストアならどこでも600万円以上の年収が得られるわけではありません。また、店舗運営に携わる役職に昇進すれば、1,000万円以上の年収も珍しくありません。

病院勤務
一昔前までの病院で勤務する薬剤師は、院内薬局で処方箋調剤に明け暮れるのが仕事でした。
患者さんとのやり取りは医師や看護師が行うので、患者さんとの関わりもあまりありません。

しかし現在、病院勤務の薬剤師の業務は一転し、患者さんの治療に直接関わるものとなりました。

「調剤薬局」でも触れた医薬分業以降、薬剤師は「チーム医療」の一員として、ほかの医療従事者とともに患者さんの診療にあたっています。
服薬指導をはじめ、副作用の確認や薬歴の管理など、薬の専門家として治療に携わります。また、患者さんの薬への不安や疑問に答えるのも重要な仕事です。

このような病院内での薬剤師の立場は、2012年の診療報酬改定で新設された「病棟薬剤業務実施加算」によってさらに強固なものとなりました。
この加算のためには、全病棟に常勤の薬剤師が配置されるのが条件となりますので、薬剤師のニーズはぐっと高まりました。

なお、病院勤務をしている薬剤師の年収は、「薬剤師の年収」で確認したとおり約558万円です。

薬剤師がなれる意外な職業

麻薬取締官
薬剤師がなれる意外な職業としてまず挙げたいのが、麻薬取締官です。
麻薬取締官とは、薬物犯罪の取り締まりや捜査を行う国家公務員です。

薬剤師といえば、白衣を着た優しそうな人を連想すると思います。そんなイメージとは対極といってもいい雰囲気が漂う職業ですよね。

しかし、麻薬捜査なんて警察官がすることではないの?と思いませんか。
実際、それは間違いではありません。
麻薬取締官は刑事訴訟法に基づく特別司法警察員、つまり警察官としての権限が与えられています。

麻薬を取り締まるという危険な職務であるため、司法警察員としての職務を遂行する場合という条件はありますが、拳銃や特殊警棒の携帯が認められています。
薬剤師資格を持っていて、人とは違う働き方をしてみたい方は、麻薬取締官を目指してみてはいかがでしょう。

自衛隊薬剤官
次に、紹介するのは自衛隊薬剤官です。
自衛隊薬剤官は自衛隊内の衛生管理全般を担当し、その仕事は多岐にわたります。
調剤や薬品の管理といった薬剤師として馴染み深い業務だけでなく、自衛隊員の健康管理も担います。
任務によっては海外派遣もあり、環境の変化で体調を崩しがちな隊員の健康管理は重要な任務です。

自衛隊薬剤官は薬剤師としての意識だけではなく、自衛官としての意識も必要になります。
薬剤師の資格を活かしつつ、国防という大きな役割を担うことができます。

創薬研究者
創薬研究者とは、新しい薬を開発する研究者のことです。
創薬研究者として働けるのは大学や製薬会社などで、薬剤師のなかでもとりわけ狭き門です。薬を開発するには、化学物質の発見から安全性の確認など10数年の時間が必要となります。
薬として一般に出回るのは、2万に1つという気が遠くなるような世界です。そのため医薬品の研究者は、生涯に1つでも商品化できるものを見つけられたら成功ともいわれています。

また、創薬研究者は医師や薬剤師である必要はありません。
2015年にノーベル賞を受賞した大村智氏も、薬学博士号は持っていますが、医師や薬剤師の資格は持っていません。
生物学や化学のエキスパートがしのぎを削る厳しい現場ですが、その成果によっては、世界中で何億人もの命を救うことができる、他に類を見ない職業です。

年収の面でも、1,000万円と高い水準です。
なお、大学の研究者となるか製薬会社の研究施設に入るかによって、年収にも多少の差は出てきます。また、薬の開発に成功すれば、特許料などを得られる可能性もあります。前述の大村氏は、合計で250億円もの特許料を得ていると言われています。

MR
MRとはメディカル・リプレゼンタティブ(Medical Representative)の頭文字をとったもので、製薬会社の医薬情報担当者のことを指します。

主な仕事は、病院で働く医師や薬局で働く薬剤師などに、自社の薬の有効性や安全性をPRすることです。
PRと聞くと、いわゆる営業職を連想するかもしれませんが、自社の商品を多く売ることだけが目的ではありません。その証拠に、MRは医療機関に価格を提示して契約を結ぶことが禁止されています。

MRは、副作用や使用禁忌などマイナスになるような情報も必ず伝えます。
医薬品は副作用によって大きな被害が出すこともあり、薬害とよばれる社会問題に発展してしまうこともあります。
そのため、MRは薬の安全性について細心の注意を払わなくてはならず、副作用なども含めて正確に情報を伝えます。また、実際に薬を使用してもらった結果をフィードバックしてもらうのも、重要な仕事です。

MRは薬剤師資格が必要なわけではなく、いわゆる文系出身者も活躍する職業です。とはいえ、薬を扱う仕事ですので、薬に精通していることで有利になります。

年収は500万円から1,000万円と高収入が望めます。
しかし、給与は多くの場合が成果主義です。成績によって年収も増減するのが、ほかの薬剤師資格を活かした職種との大きな違いでしょう。

アメリカの薬剤師事情

さて、ここまで薬剤師の多様な働き方をみてきましたが、海外と比較するとどうなのでしょうか。
実はアメリカの薬業界は、日本より何年も先を行っていると言われています。
たとえば、日本ではまだ始まったばかりの薬学部の6年制ですが、アメリカでは1990年代から始まっています。

また、アメリカと日本では薬剤師の在り方が大きく違います。アメリカにおける薬剤師は、長い間「信頼される職業No.1」に輝いていました(『図解入門業界研究最新調剤薬局の動向とカラクリがよーくわかる本』より)。9.11同時多発テロによって1位の座は消防士と入れ替わりましたが、薬剤師の信頼は変わらずに高いままです。

このような差は、日本とアメリカの保険制度の違いからきています。
国民皆保険制度がある日本では、お金がないからと病院に行くのをためらうことはあまりありません。
対してアメリカの保険制度では、ある程度の収入がないと医師の診察を受けるのは難しいのです。そんなアメリカ社会において、薬剤師は、気楽に話しかけられて、医学的な相談をしてもお金を要求されないという貴重な職業なのです。

2.他の医療従事者との年収比較

医師の年収

ここでも「第22回医療経済実態調査の報告(令和元年実施)」を参照します。この調査では、一般病院で働く医師の給与が集計されています [1]

平均給料 13,229,342円
賞与 1,679,201円
合計 14,908,542円

平均年収で1,000万円を超える職業は、数えるほどしかありません。
やはり医師は、一般的なイメージ通り、高い年収を得られる職業であることがわかります。

しかし、平均給与といっても、医師の働き方は非常に多様です。
一口に勤務医とまとめてみても、研究と臨床、国公立と民間、都市部と地方、診療科……給料を左右する要素がたくさんあります。
たとえば人手不足の地域や診療科などでは、さらに高い年収が得られる可能性があります。

さらに、夜中の当直や昼間の診察など、医師はアルバイトをします。
アルバイトは、所属している医局から斡旋されることもあります。
つまり、働いている職場からアルバイトを紹介されるようなものです。一般企業ではまず考えられないですよね。
気になる時給は、なんと1万円ほどと言われています。日給ではなく、時給です。年間でみると、アルバイトだけで数百万円もの収入が得られます。

このように、医師の年収は平均でも高い水準にあり、さらにその年収を上げる働き方を選べる珍しい職業なのです。

入学も卒業も難しい医学部

いま医学部の志願者数が増え続けているのをご存知でしょうか。
志願者数は、2007年度の10.7万人から2014年度には14.4万人まで増加しています。
全大学の医学部の募集定員を合計すると、8,813人。倍率にして16.4倍です。
少子化の一途をたどる昨今では、驚くべき人気ぶりといえるでしょう。

こうした人気の背景には、学費の値下げがあります。
なかでも顕著な例は、帝京大学です。2014年度の入試から、6年間でかかる学費を約1,170万円も引き下げました。
このように私立大学のなかでは学費を下げる傾向があり、いわゆる中流家庭からも医学部を目指す子供が増えました。

とはいえ、私立大学の医学部を卒業するには、いまだに数千万円の学費が必要になります。
国立の医学部ならば約350万円で済みますが、偏差値は軒並み高く、やはりその壁は非常に高いと言えるでしょう。

しかも、この受験戦争を乗り越えたからといって、すぐに医師になれるわけではありません。医学部は進級するだけでも、並大抵ではない努力が必要になります。

たとえば、履修する全科目が必修で、その全てに合格をしなければ進級はできません。
また、5年次の臨床実習の前には各種試験があり、これをクリアしなければ臨床実習に臨めません。
学科、実技ともに合格せねばならず、その難易度も高いといわれています。

これらを乗り越えて、ようやく医師免許を得るための国家試験に臨めるのです。

合格率からは測れない医師国家試験の難しさ

2018年2月に実施された「第112回医師国家試験」の合格率は、全体で90.1%。
過去10年でも90.2%と高めの合格率で推移しています。

高い合格率から、易しい試験なのかと思うかもしれません。
しかし、医師国家試験は、6年間の医学部生活を乗り越えた学生だけが挑戦できる試験です。
前述のとおり、医学部は進級にも絶えまない努力が必要です。
それでも毎回10%程度の学生が不合格になるわけですから、決して容易な試験ではないことがわかると思います。

看護師の年収

医師と同じ職場で働く看護師は、どのくらいの年収を得ているのでしょうか。
先ほどと同じく、「第22回医療経済実態調査の報告(令和元年実施)」を参照してみます。

平均給料 4,055,754円
賞与 1,016,301円
合計 5,072,054円

看護師の給与のうち、基本給は一般企業のサラリーマンと同じくらいです。
それでも500万円近い年収を得ているのは、各種の時間外手当が多いからでしょう。病院での働き方では、時間外手当や休日手当を受けることが多くあります。また、当直を行う環境であれば、深夜手当や夜勤手当なども支払われます。

その一方で、看護師は決して楽な職業ではありません。
最近では、看護師は9K(きつい、汚い、危険、過酷、給料が安い、休暇が取れない、帰れない、婚期が遅れる、化粧がのらない)と表現されることもあります。実に看護師の大変さがうかがい知れる言葉です。

こういった事情もあってか、看護師の離職を問題にしたニュースや特集をちらほらと見かけますが、データで見ると看護師の離職率というのは必ずしも高くないことをご存じですか。

常勤の離職率で比較すると、2018年の看護師の離職率は10.7%。対して、全職種の平均離職率は11.3%です。データの上では、全職種平均よりも、看護師の離職率のほうが低いことがわかります [2] [3]

最も早く医療の現場に立てる

看護師は医療従事者のなかで最も早く医療の現場に立てる職業です。
また、30代から医師を目指すのはドラマ化されるほど珍しいことですが、看護師ではそう珍しいことではありません。
とある取材によれば、都立の看護学校では1学年80人のうち2割近くが30~40代といわれています。

看護師は、国家資格の看護師と都道府県によって認定される准看護師にわけられます。

准看護師は、中学卒業から最短2年で資格を取得することができます。
しかし、看護師との統一化を目指す動きもあり、すでに神奈川県では准看護師の養成を取り止めています。
准看護師になるには、各都道府県が実施する准看護師試験に合格する必要があります。

看護師になるには、4年制の看護系大学や3年制の専門学校を卒業し、看護師試験に合格する必要があります。

看護師は大学卒でも専門学校卒でも収入に大きな差はないといわれ、経験や実力を評価される傾向があります。
製薬会社などの異業種に転職する際、学歴が影響することもあるようです。

国家試験の合格率

准看護師試験の合格率は、各都道府県によって試験が実施されているため、合格率にもばらつきがあります。全国の平均では、およそ90%といわれています。
看護師試験の合格率は、過去10年間に平均約90%で推移しています。

合格率は高めですが、先ほどの医師国家試験のような難関の試験ではありません。
学校単位でみると、合格率100%近い学校もあるほどです。

3.地方における医療従事者

給与は都市部で高く、地方では安いのが一般的です。
しかし、医療従事者ではその逆の現象が起きています。
理由は簡単です。地方では、医療従事者の人手が足りないのです。医療従事者を雇うために、都市部よりも好待遇が用意されていることも珍しくありません。

都市部から地方へ移住して働くIターンやUターンは、往々にして賃金が下がるというデメリットがあります。
その点で医療従事者は、賃金の心配をせずに働く場所を選べるのです。

都市部と地方における給与差について

給与は都市部で高く、地方では安いと書きましたが、実際にどの程度の差があるのでしょうか。
ここでは都道府県別に全産業の平均年収が割り出されている「令和元年賃金構造基本統計調査」を参照します。平均年齢の違いも考慮できるよう「労働統計年報 平成29年」も参照してみましょう。

やはり世間一般的なイメージの通り、大都市圏の平均年収は高く、トップの東京都と沖縄県では192万円もの差があります [4]
また、トップ3内で見比べても1位の東京都と2位の愛知県で83.2万円もの差があり、東京への一極集中が見て取れます。

公営病院からみる地方の給与の高さ

では、地方における医療従事者の給与は、都市部とどの程度の差があるのでしょうか。
ここでは、「平成30年度地方公営企業決算の概要」から医師と看護師の年収を参照します。この資料は公営病院の経営主体別に、都道府県、指定都市、市、町村にわけられています。

医師は特に地方に位置する、経営規模も小さい「町村」の公営病院で最も高い年収を得られることがわかります [5]
一般的な職種に置き換えれば、都市部の大企業よりも、地方の小さな会社で高い給料を得られるようなものです。

一方、看護師ではあまり大きな差はありません。「都道府県」で最も高い年収となっていますが、大都市圏と地方で大きな年収差はないことが読み取れます。

都道府県別にみる薬剤師の年収差

「地方公営企業年鑑」には薬剤師の年収は調査されていないため、別の資料を参照します。
ここでは、「平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況」から引用してみましょう。(※ 都道府県ごとの調査対象N数が90人~6,930人のサンプリング調査であることはご了承ください。)

先ほどの全産業の平均年収とは全く違う結果となり、トップ3に大都市圏は含まれていません [4]
では、先ほど全産業の平均で高年収であった東京都、愛知県、神奈川県はどのような結果になったかといいますと、以下のようになっています。

特筆すべきは、東京都と静岡県で145万円もの差がついている点です。
上記のトップ3と比較しても、大都市圏と地方部での逆転現象がはっきりと読み取れます。

実際の求人からみる地方の給与の高さ

それでは、さらに焦点を絞って、具体的に薬剤師の求人を取り上げてみましょう。

このように、都市部と比較して、2倍近い年収が得られる求人があります。また、社宅完備や週休2.5日といった、年収以外の待遇も気になるところですね。
とても珍しい例ではありますが、こんな求人があること自体が驚きです。

とくに雪深い地域や薬剤師の不足している地域で、年収が高い傾向にあります。
高いお金を払ってでも医療従事者に来てほしいという、地方の医療へのニーズがうかがい知れます。

ここまで確認したように、医療従事者は一般的な職種と正反対に、地方でも高い給与を得られるチャンスがあります。

また、注目したいのは、都市部と地方では業務内容にも違いがあることです。これについては、次の章でみてみましょう。

地方で働くということ

給料が高くなるのであれば、地方で働くほうがいいのでは?そう思う方も多いでしょう。

しかし、人手が足りない地域で働くということは、その分いろいろな仕事をしなければいけないということです。
自分にしかできない仕事というのは、裏を返せばなかなか助けを得られないということでもあります。専門分野ばかりではなく、幅広い知識が求められるのです。
まさに、テレビや漫画で話題になった、孤島やへき地を舞台にした医療ドラマのような働き方です。

また、都市部での生活に慣れていると、地方の濃密な人付き合いに戸惑うこともあるでしょう。患者さん一人ひとりとの付き合い方も、より深くなります。

給料と働き方をよく考え、まずは働き方の選択肢のひとつとして考えてみるとよいでしょう。

4.医療従事者になることは自分への投資

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医療従事者は、少なくともこの先数十年はなくなることのない職業でしょう。よく10年後になくなる職業という話題がありますが、そこに医療従事者の名前が挙がることはまずありません。

オックスフォード大学で人工知能などの研究を行うマイケル・A・オズボーン准教授の研究によれば、10~20年で半数以上の仕事が自動化されるといわれています。
そんなバカなと思うかもしれませんが、すでに身近なところでいろいろなものが自動化されています。
たとえばファミレスや居酒屋などで、タッチパネルのメニューで注文したという経験はないでしょうか。回転寿司などでも、自分のテーブルに自動で注文の品が届くお店がありますよね。

本来、サービス業は人と人とがコミュニケーションをする職業なので、機械化は難しいといわれていました。
しかし実際、知らず知らずのうちに自動化されたお店が浸透しています。駅の改札、スーパーのセルフレジ、少しずつ自動化されたものを利用する機会が増えている気がしませんか。

様々な仕事が自動化・機械化しているなかで、この先いなくなることのない医療従事者になることは、将来の自分への投資と言えるのです。

5.まとめ

一口に医師や薬剤師といっても、働き方ひとつで年収も変わっていきます。
医療従事者になるには、決して安価ではない費用と並大抵ではない努力が必要となるので、やはり後悔しない働き方を選びたいものです。
また医療従事者は、働く地域によって年収を上げることができますので、「働く地域」も大きな選択肢となります。

働き方も働く場所も、突き詰めれば「自分はどのように働きたいのか」に集約されます。
年収や環境など、大事にしたいことは人それぞれ違うと思います。
この記事が自分にあった職場について考えるきっかけになれば幸いです。

参考文献

[1] 第22回医療経済実態調査の報告(令和元年実施)
[2] 2019年病院看護実態調査
[3] 平成30年雇用動向調査結果の概要
[4] 令和元年賃金構造基本統計調査
[5] 平成30年度地方公営企業決算の概要

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この記事を書いた人

薬プレッソ編集部

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薬剤師のみなさんが仕事でもプライベートでも、もっと素敵な毎日を送れるような情報を日々発信しています。

「薬プレッソ」の「プレッソ」はコーヒーの「エスプレッソ」に由来します。エスプレッソの「あなただけに」と「抽出された」という意味を込め、薬剤師の方に厳選された特別な情報をお届けします。

「プレッソ」にはイタリア語で「すぐそばに」という意味もあります。編集部一同、薬剤師のみなさんと伴走しながら、みなさんの「もっといい人生、ちょっといい毎日」のために「ちょっといいメディア」にしていきたいと思っています。

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