薬局での不満No.1!? 待ち時間を減らすポイントを紹介

患者さんが真っ先に挙げる薬局への不満、それは長い待ち時間だと言われています。
多くの患者さんは体調の悪い中薬局へ来ています。薬剤師は患者さんがなるべく早く自宅に戻れるよう、できる限り待ち時間短縮のための努力をする必要があります。
不満の元になりがちな待ち時間ですが、短縮することができれば薬局への満足度アップに繋がります。
患者さんが持つ待ち時間に対するストレス軽減、トラブル回避のためにどのような対策が考えられるのでしょうか。
- 1章 なぜ患者さんは薬局での待ち時間を長く感じるのか?
- 2章 薬局全体で出来る工夫
- 2-1 FAX・スマートフォンを利用する
- 2-2 予製薬を作成する
- 2-3 過ごしやすい待合室にする
- 2-4 スタッフの教育を行う
- 2-5 無駄な動きを減らし、業務を効率化する
- 3章 個人で出来る工夫
- 3-1 待ち時間と状況を伝える
- 3-2 伝え方・謝罪にも気を配る
- 3-3 再来局、後日来局をすすめる
- 4章 おわりに
1章 なぜ患者さんは薬局での待ち時間を長く感じるのか?
患者さんは薬局の仕事を「ただ薬を渡すだけ」と考えています。
でも、実際は患者さんが考えている以上に時間のかかる作業が多くありますよね。その結果が長い待ち時間として現れてしまいます。
多くの患者さんは待ち時間が減ることを望む中、薬剤師は時間を短縮させながら正確な調剤を行わなければなりません。
薬剤師の仕事はなぜ時間がかかる作業が多いのでしょうか?
例えば調剤薬局では処方せんを受付けた後、入力、調剤、監査を経て薬を交付するのが主な流れです。しかし、薬剤師の仕事はそれだけではありません。
処方せんの記載のミスや併用禁忌薬の確認など、患者さんごとに処方せんの内容、お薬手帳、過去の薬剤服用歴などを注意深く確認する必要があります。
また疑問点がある場合は医師に疑義照会を行う必要があり、問題を解決した後でなければ調剤できません。
在庫していない薬が処方されたり、十分に備蓄していなかったりする時もあります。薬が不足している場合、近隣の薬局に連絡を取って薬を分けてもらったり、医薬品卸に頼んだりして薬の入手に奔走しなければなりません。
一つの薬が準備できるまでにどこかの段階で時間を取られると、待ち時間はどんどん長くなります。
患者さんからすると薬局での待ち時間は長くなるほど苦痛なもの。薬局が混んでいる時は病院でもすでに長時間待たされている場合が多く、さらに待たされてイライラするのも無理のないことです。
多くの患者さんが薬局での待ち時間を長いと感じ、もっと短くならないかと考えています。中にはクレームに至るケースもあります。
患者さんを長時間待たせていることが事実であったとしても、正確に調剤業務を行うためには時間短縮ばかりを気にしているわけにはいきません。それがこの問題の難しいところです。
2章 薬局全体で出来る工夫
待ち時間を短縮するためには、薬剤師だけでなく医療事務スタッフも含め薬局全体での取り組みが必要です。実際にどのような工夫をすれば、待ち時間を減らせるのでしょうか?
2-1 FAX・スマートフォンを利用する
待ち時間を少なくするのに効果的な方法として、FAXやスマートフォンの利用が挙げられます。
受診した医療機関のFAXコーナーや自宅、会社などからあらかじめ処方せんの内容をFAXで送ってもらうことで患者さんが移動している間に調剤を開始でき、薬局での待ち時間を減らすことができます。時間がかかる調剤内容が含まれる処方せんの時は特にこの方法が有効です。
また一部の調剤薬局ではすでにスマホを利用した処方せん受付サービスを導入して、患者さんから好評を得ているようです。
このシステムでは、患者さんは薬局に来る前にスマホや携帯電話のカメラ機能を利用して処方せんの写真を撮影し、その処方せんの写真を事前に薬局へ送ります。薬局では送られてきた処方せんに基づいて薬を準備し、準備ができた時点で患者さんにメールでお知らせします。
人員の確保や経費の関係でここまでできないという薬局もあると思います。そのような薬局では、処方せんを受け付けてから薬の受け取りまでにちょっと外出したい患者さんのために、薬が出来上がった時点でメールや電話で連絡するというサービスを取り入れてみてもいいかもしれません。専用のソフトを開発している会社もあるので、利用してみるのも一つの手です。
FAXやスマホを上手に利用すれば、患者さんは時間を有効活用することができ、待ち時間の不満を一挙に解決できます。
ただし、この方法にはひとつだけ注意点があります。
すでに処方せんの内容をFAXやスマホで送ってもらっていても、薬の交付は処方せんと引き換えでなければなりません。
このシステムを利用する患者さんには必ず処方せんの原本を持って、処方せんの有効期限内である、発行日を含めて4日以内に来局してもらうようにお話しておきましょう。
2-2 予製薬を作成する
頻繁に処方される散剤や軟膏の合剤などはあらかじめ予製薬を準備しておくことで、調剤にかかる時間の短縮が図れます。
散剤、水剤の調剤や軟膏の混合、半錠の分包などはヒートシールで交付する時よりも時間がかかるので、特に重点を置くようにしましょう。
基本的によくでる処方を中心に予製薬を作成しますが、予製した日付が分かるように記入しておき、万が一古くなった場合は廃棄するなど工夫しましょう。基本的なことですが、予製薬を作り足す時は以前からあるものを手前にして先出しするのが大切です。
時間がかかる調剤には錠剤の一包化もあります。混みあっている時間に複数の科を受診した患者さんの90日分の一包化の処方せんが来たとしましょう。その対応だけで、1人の薬剤師が数十分間かかりきりになり、その後、他の薬剤師が監査を行うためにしばらくの間、手を取られます。
いつも同じ日数で定期処方が続いている患者さんなど、次回の来局予定日や処方内容が予測できるケースは、一包化のDo処方(前回と同じ処方)を前もって準備し、監査まで済ませておくといいかもしれません。
ただし、処方に変更がある場合もあるので、処方せんを受け取った際には十分に確認しましょう。そして変更があった時は一包化をやりなおさなくてはなりません。
特定の患者さんの一包化の予製薬を作成した場合は、どのスタッフでも一目で予製薬の存在が分かるようにカルテに記載しておくなど工夫が必要でしょう。
お盆前や年末などの長期休みに入る前は、持病のたくさんの方が医療機関を受診し、処方せんを手に薬局に来ます。混雑期に時間のかかる調剤が含まれる処方せんが来ると、患者さん全体の待ち時間にも大きく影響します。混雑時に備えて、予製薬を準備しておくことは効果的な方法です。
ただし、事前に監査済みの予製薬であっても処方せんと突き合わせて、薬剤師二人でのダブル監査を徹底するようにしましょう。
2-3 過ごしやすい待合室にする
快適な空間であれば、待ち時間をそれほど苦痛に感じないものです。過ごしやすい待合室の提供ができれば、長く待っていると感じにくくなり、待ち時間の長さに対するクレームを減らせるでしょう。
何もすることがなくただ座って待っているだけというのは、誰でも苦痛なもの。待ち時間を快適に過ごせるように本、新聞、雑誌などを待合室に置いたり、テレビやDVDを流したりしている薬局も多いと思います。
その他にもパンフレットやポスター、掲示物などヘルスケアについて啓発しながら時間を過ごせる読み物を提供するのもいいアイデアでしょう。
また血圧測定器や給水器、給茶器も患者さんに喜ばれるアイテムです。高血圧治療中の方だと服薬指導の順番が回ってきた時に測定値について説明を求められることもあるでしょう。そんな時は血圧の値について説明しながら服薬指導を充実したものにすることができ、一石二鳥です。
小児科の処方箋を多く受け付けている薬局では子供連れの方も多いので、子供用の絵本やおもちゃを置いているところもあります。もしスペースに余裕がある場合、キッズコーナーを設けると喜ばれるでしょう。
車いすの方や高齢者の患者さんもいるので、トイレを含めて薬局内はバリアフリーにするのが望ましいですね。
居心地のよい空間にするためには薬局全体の内装にも注意が必要です。落ち着きのある色彩で統一し、明るく開放的な空間を作りましょう。
待合室から調剤室内の様子が見える設計がいいです。調剤室の薬剤師からも、患者さんの状態に気を配りながら調剤することができます。
服薬指導をするスペースはプライバシーの保護が配慮されていることが重要です。他の人に会話の内容が漏れないような造りが好ましいでしょう。またゆっくり服薬指導できるよう、椅子を配置するのがベターです。さらに長時間座っても疲れないよう、座りやすい椅子にもこだわりたいですね。
このように待合室を過ごしやすいものにするアイデアはたくさんあります。全て実現しようとすると安い出費では済みませんが、快適な空間を提供することは待ち時間対策になるとともに今後の集客にも繋がります。
2-4 スタッフの教育を行う
受付、入力、調剤の時間を短縮するためには、スタッフの教育をし、能力を高めることが重要です。
急いで調剤ミスをしてしまうのは本末転倒です。熟練した医療事務スタッフ、薬剤師になればなるほど、正確に素早く業務を遂行できるようになります。
例えば、小児科の粉薬や水薬など調剤に時間がかかりそうな処方せんを受け付けたケースを考えてみましょう。
薬局ごとに調剤に時間のかかる処方せんの存在を知らせる方法には違いがあると思いますが、受け付けたスタッフが機転を利かせられるかどうかがポイントです。
時間がかかる処方せんの調剤を優先して始められるように調剤かごの色を変えたり「時間注意」の札を入れたりする判断ができるといいですね。作業の優先順位が付けやすくなり、他のスタッフが特に注意を払って迅速に対応できます。
研修の制度を充実させスタッフ各自が置かれた状況を把握し、臨機応変に能率よく行動することで待ち時間を大幅に減らすことが可能です。
2-5 無駄な動きを減らし、業務を効率化する
薬剤棚や機材の配置などを考え直すことで、動線を短縮できるようになります。効率的な動線を確保することができれば、無駄な動きが減り効率よく作業ができるようになるでしょう。
薬局をぐるりと見渡してみてください。無駄な動きを生み出す原因となっている箇所はありませんか?薬剤棚の並べ方や機材の置き方を工夫するだけで、すいぶんと無駄な動きは減らせます。
また無駄な作業がないか日頃の業務を洗いなおして、業務の効率化を図ることも重要です。
3章 個人で出来る工夫
待ち時間の短縮には取り扱う処方せん枚数に見合った薬剤師の配置や自動分包機などの最新の調剤機器の導入なども含め、薬局全体での取り組みが重要です。さらに、個人でできる工夫もたくさんあります。
この章では、具体的にどのような工夫ができるのか考えていきましょう。
3-1 待ち時間と状況を伝える
どれぐらい時間がかかるのか分からないままの状態で待つとなるとイライラは募るものです。あらかじめ時間がかかると分かっている場合は、待ち時間の目安を伝え、待ってもらえるか尋ねましょう。
電光掲示板や番号札を利用して何人待っているか分かるようにするのもよい方法です。
国内最大手の腕時計のメーカーとして有名なCITIZENが2013年に行った『ビジネスマンの「待ち時間」意識調査』によると、総合病院で45分間待たされると過半数の方がイライラを感じることが分かりました。
薬局の場合は、病院ですでに待っているので、更に短い時間でイライラを感じてしまうことが考えられます。
スタッフが患者さんに声かけをし、だいたいの待ち時間が分かれば、患者さんはその間に用事を済ませるなど時間を有効に活用できます。もしくは別の日に受け取りにくる、別の調剤薬局に行くなどの選択をしやすくなります。
3-2 伝え方・謝罪にも気を配る
待ち時間を伝える際に重要なのは、その伝え方です。また長く待っていただくのですから、心を込めて謝罪することが大切です。
まずは待ち時間の目安をお知らせし、長くお待たせすることについてのお詫びをしましょう。
お待ちいただけるか尋ねた上で、了承してもらうとさらによいでしょう。この場合、患者さん自身が待つことを選択したという意識が働き、待ち時間への不満が湧きにくくなります。
散剤、水剤、軟膏の混合や錠剤の一包化など、あらかじめ時間がかかる処方を受け付ける際は、薬の受け取りの順番が他の患者さんと前後する可能性を伝えておくとトラブルを回避することができます。
また待たされる理由を明確にすることで、不満が軽減されます。
薬剤師の対応次第で、患者さんの受ける印象はずいぶんと変わります。
声かけの仕方が悪いとクレームに発展してしまうケースもありますので、思いやりの気持ちを忘れず丁寧に対応しましょう。
3-3 再来局、後日来局をすすめる
薬局が自宅や職場から近い場合の再来局や、後日来局も選択肢の一つです。処方せんの有効期間を伝え、比較的空いている曜日や時間が提案できればさらによいでしょう。
このような提案をするためには、日頃から各曜日や時間ごとの処方せんの平均受付枚数などを集計しておき、どの曜日や時間が混雑することが多いのか把握しておく必要があります。
4章 おわりに
待ち時間の問題は、多面的な対策が必要な課題です。
混雑して待ち時間が長くなると、薬局のスタッフも患者さんもストレスを感じ、さらに作業の効率が悪くなるものです。
日頃から薬局のスタッフ間で頻繁に話し合う機会を持ち、待ち時間短縮のアイデアを出し合うなどし、気持ちの良い対応ができる薬局を目指しましょう。