後悔しない転職を! 薬剤師が一般企業で働くには?

薬剤師の勤務先といえば、調剤薬局・ドラッグストア・病院がほとんどですが、一派難企業に勤めている薬剤師も中には存在しています。
薬剤師として転職をするにあたって、企業で働いてみたいと考えている方はいませんか?
企業薬剤師になるための求人や転職状況は、調剤薬局やドラッグストアへの転職とは少し状況が異なっています。
一体どんなことに注意し、転職活動を進めていけばよいのでしょうか。
この記事では、企業薬剤師と呼ばれる人たちが活躍している職場や特徴、そして転職をするうえでの注意点を紹介していきます。
一般企業に勤めたいと考えている薬剤師の方は、是非参考にしてみてください。
- 1 どのような職種があるのか
- 1-1 MR(医療品メーカーの営業職)
- 1-2 医療品や医療用具の営業職
- 1-3 DI(学術)
- 1-4 CRA(臨床開発モニター)
- 1-5 CRC(治験コーディネーター)
- 1-6 製薬会社・医療品卸会社の管理薬剤師
- 1-7 企業内診療所の薬剤師
- 2 企業薬剤師の特徴
- 2-1 年収アップが期待できる
- 2-2 土日祝休み、盆や年末年始など、まとまった休みを取ることができる
- 2-3 調剤以外の業務を経験することができる
- 3 企業に転職する際の注意点
- 3-1 求人の数が圧倒的に少ない
- 3-2 調剤業務に関わらない
- 4 まとめ
1 どのような職種があるのか
薬剤師の職場は、調剤薬局・ドラッグストア・病院の3つが主です。そのため、企業に勤めている薬剤師は全体の約15%だと言われています。
全体数の少なさから、「興味はあるけど、どんな仕事をするのかイメージができない」という方もいるでしょう。
この章では、企業に勤める薬剤師が主にどのような仕事をしているのか、詳しく説明していきます。
1-1 MR(医療品メーカーの営業職)
MRとは「Medical Representative」の略で、医薬品情報担当者とも呼ばれている、製薬会社で働く営業職です。
MRは、自社の医療品を安心安全に使ってもらうため、病院や調剤薬局で働く医師や薬剤師に対して必要な情報を提供する仕事です。
それ以外の業務としては、自社の医療品を服用した効果や副作用などの情報収集や、自社の医療品を普及するための宣伝や販売などの営業活動を行っています。
MRになるために、薬剤師の国家資格は必要ありません。そのため、文系出身のMRもたくさんいます。薬剤師の免許を持っていれば、薬の専門知識を生かし、営業を行うことができるでしょう。
1-2 医療品や医療用具の営業職
医療機器や医療用品メーカーの営業職として働いている薬剤師もいます。
自社で開発・製造した医療機器を、医師や看護師などの医療従事者に販売する仕事で、医療機器の使用方法を説明するために治療現場に立ち会うこともあります。その際、他の自社製品をPRすることはもちろん、デモンストレーションを行ったり購入後の問い合わせに対応したりすることもあります。
1-3 DI(学術)
DIは「Drug Information」の略です。名前の通り薬に関する詳細な情報を医師や薬剤師などの医療従事者、もしくは患者さんに分かりやすく伝えるための役割を持っています。
薬の添付文書について何か分からないことがあったり、詳細について知りたかったりするときは、医師や薬剤師が添付文書に掲載されている製薬会社の連絡先に電話をして問い合わせます。
この問い合わせに対応するのが、DIの仕事です。
問い合わせの内容によっては、緊急に対応しなければならないものや予想外の状況で起こることもあります。そのため、自社の医薬品情報を資料にまとめて医療機関に提出する仕事もしています。
安全情報や関連文献などの医療品情報を伝えなければならないため、ビジネスレベルの英語力とライティングスキルが必要になります。
1-4 CRA(臨床開発モニター)
CRAとは「Clinical Research Associate」のことで、臨床開発モニターとも呼ばれています。
CRAは、CRO(受託臨床試験実施機関)と呼ばれる治験関連企業で働き、臨床試験がGCP(国際的に合意された医療品の臨床試験の実施に関する基準)に基づいてきちんと行われているのかを確認しています。
具体的には、以下のような業務を行っています。
- ●治験を行う医療機関や医師の調査、選定、更新手続き
- ●病院で治験を実施するスタッフへの説明会を開催
- ●計画書に従った治験が行われているかのモニタリングと進捗管理
- ●被験者データをまとめた症例報告書をチェックした後、依頼者である製薬会社にフィードバックする
- ●治験薬の管理
このように、CRA(臨床開発モニター)は、製薬会社や治験を行う病院の医師とのやりとりが主な業務内容です。
1-5 CRC(治験コーディネーター)
CRCとは「Clinical research coordinator」の略で、「治験コーディネーター」とも呼ばれています。
CRCは、病院から依頼される「SMO(治験施設支援機関)」と呼ばれる医療機関を訪問し、被験者の患者さんや治験責任医師・治験依頼者のCRA(臨床開発モニター)との間に立って、コーディネートする仕事をしています。
「治験準備業務」と「治験支援業務」の2種類の業務に分類することができ、具体的には以下のことを行います。
・治験準備業務
- ①CRA(臨床開発センター)からプロトコールと呼ばれる治験実務計画書を聞いて、理解する
- ②治験薬の管理、確認
- ③病院での説明会の開催、関係者との役割の確認
- ④その他、必要な書類の準備など
・治験支援業務
- ①被験者への、インフォームドコンセントと呼ばれる同意説明や同意取得の補助を行う
- ②治験実施計画書に合わせた、スケジュールの管理
- ③検査データの収集や管理
- ④症例報告書の作成支援
- ⑤治験の実施状況をCRA(臨床開発モニター)に報告する、など
また、CRC(治験コーディネーター)は、被験者だけではなく、治験席に西や薬剤師、看護師などの他の医療従事者のサポートを行ったり、外部の人とのやり取りを行ったりもします。
1-6 製薬会社・医療品卸会社の管理薬剤師
製薬会社・医療品卸会社は、「医薬品医療機器等法」に則り、各事業所に管理薬剤師を配置しなければなりません。
調剤薬局やドラッグストアなどの医薬品を取り扱う場所では、管理薬剤師を置く決まりになっているのです。
しかし、企業と、調剤薬局・ドラッグストアでは、管理薬剤師の業務は少々異なっています。
企業に勤める薬剤師は、医師からの処方せんに基づいた薬剤の処方を行うことは、まずありません。
主な業務内容としては、以下のようなことを行います。
- ●温度管理などを含む品質管理
- ●社内外からの医薬品に関する問い合わせ対応
- ●医薬品の有効性、安全性に関する調査
- ●ほかの薬剤師や社員などに対する研修や指導など
製薬会社・医療品卸会社では、扱っている医薬品が多いため、知識を得る機会や薬剤について勉強をする機会が多く設けられています。
また、管理薬剤師は新人教育など責任のある仕事を任される場合もあります。人とのコミュニケーションを通じて、やりがいを感じることができるでしょう。
1-7 企業内診療所の薬剤師
企業内診療所の薬剤師は、大企業に設置されている医務室に勤めます。医師や看護師とともに、調剤や薬剤管理、職員の健康管理などを行っています。
企業内の医務室なので、風邪や腹痛などへの対応が多く、重病患者はほとんど来ないでしょう。そのため、企業内診療室の薬剤師の主な仕事は、生活習慣病やインフルエンザの予防、海外出張予定のある社員への感染病予防の呼びかけなどを行っています。
ただ、薬剤師を採用している企業はかなり数が少なく、求人はほぼありません。
2 企業薬剤師の特徴
調剤薬局・ドラッグストアとは異なり、企業に勤める薬剤師の働き方は特徴があります。
ひとつずつ見ていきましょう。
2-1 年収アップが期待できる
薬剤師が多く働いている調剤薬局やドラッグストアとは異なり、薬剤師の国家資格を持っていることが一般企業では大きな強みになるでしょう。
資格手当が支給されたり、専門的な職務を任せられたりするチャンスがあるため、収入アップにつながりやすいのです。
ただし、企業によって年収に大きな幅があります。そのため、現在の仕事で培った経験が生きる企業・職場を見つけ、年収アップを狙っていくことをオススメします。
2-2 土日祝休み、盆や年末年始など、まとまった休みを取ることができる
薬局やドラッグストア、病院で働いている薬剤師は土日祝が完全に休みであるケースは少なく、「家族と一緒に過ごす時間がない」「友人と休日が合わないので、なかなか遊べない」等の悩みを抱えている人は多いでしょう。
しかし、企業の薬剤師として働けば、基本的に土日祝休み。また、年間休日も120日以上設けてるところが多く、お盆や年末年始もゆっくりと休むことができます。
ただし、企業によっては休日出勤が発生したり、平日は残業が続いたりする場合もあります。
転職を考えてた際は、勤務先の労働環境をきちんと確認しておきたいですね。
年間休日だけではなく、産休・育休・長期休暇などの福利厚生も、企業の方がきちんと整備されていることが多いです。このような理由も含めて、企業で働く薬剤師は人気があると言われています。
2-3 調剤以外の業務を経験することができる
調剤薬局やドラッグストアに勤める場合、ほとんど「調剤業務」になってしまいます。経験を積んで管理薬剤師や店長に昇進することもありますが、昇進しなければ調剤業務をずっと行い続けることになるかもしれません。
しかし、企業の薬剤師として勤めれば、調剤以外の幅広い業務を行い、様々な経験を積むことができるのです。行う業務内容は、勤める企業によって異なります。自分がどのような仕事をしたいのか、キャリアプランと照らし合わせながら考えてみたいですね。
3 企業に転職する際の注意点
薬剤師が企業への転職を考えるにあたって、注意しておくべき点は様々です。
ひとつずつ、紹介していきましょう。
3-1 求人の数が圧倒的に少ない
転職を考えた時に、調剤薬局やドラッグストアと比較すると圧倒的の求人数が少ないところが、注意点として挙げられます。
他の職種と比較して求人が少ないということは、競争率も高く、かなりの狭き門であることが予想できます。
そのため、調剤薬局やドラッグストアの面接と比較するとけた違いで難しいことが予想できるでしょう。
今までは、顔合わせの場として面接を行うことが多かったと思いますが、企業の面接は意味合いが異なります。
履歴書もきちんと見られますし、面接時の対応や受け答えなども合否の判断材料になります。企業での面接は、事前にしっかりと準備をしておくべきでしょう。
企業の薬剤師は、求人が少なく、転職そのものが難しいと言われています。前職・現職でどのような仕事をしていたのかにもよりますが、転職活動が長期化することはある程度覚悟しておいた方がいいかもしれません。
3-2 調剤業務に関わらない
様々な業務を経験することができることがメリットになる反面、患者さん相手に調剤を行うことはありません。
つまり、調剤業務に関する知識や経験を伸ばすことはできませんし、患者さんとコミュニケーションを取ることもないということです。
調剤薬局やドラッグストアで働く上で、最もやりがいを感じる瞬間は、患者さんから直接感謝された時という方もいますよね。患者さんの健康に貢献できる機会がなくなってしまうのは、デメリットと言えるかもしれません。
4 まとめ
企業の薬剤師は働く上で様々なメリットがありますが、調剤薬局やドラッグストアへの転職ほど簡単にはいかないことが分かったと思います。
転職活動を行う上で大切なのは、「なぜ、企業への就職を希望するのか?転職理由は何なのか?」ということです。
前職・現職での経験と向き合いながら、転職理由などを明確にしておくことも重要です。
また、企業薬剤師に強い転職サイトに登録すると、満足のいく転職ができる可能性を高めることができます。
自分がなぜ企業の薬剤師として働きたいのかをきちんと整理し、納得のいく転職活動を行いましょう。