感染制御認定薬剤師とは? 仕事内容や資格取得方法を知ろう!

所持していると、キャリアアップや専門的な知識を身につけて様々な面で患者さんの治療に貢献できる、認定薬剤師の資格。将来的な取得を考えている方も多いのではないでしょうか?
そのなかのひとつに、感染制御認定薬剤師という資格があります。この資格は、感染制御に関する高度な技術、知識、能力を身につけていることを証明するためのものです。
近年、注目され始めている感染制御認定薬剤師。どのような役割があり、資格取得のためにどんな条件が必要なのでしょうか?
この記事では、数の多い認定薬剤師の資格の中でも感染制御薬剤師に焦点を当て、役割や資格取得の条件、メリットなどを解説していきます。
感染制御認定薬剤師の資格取得を志している方や興味がある方は、是非参考にしてみてくださいね。
- 1 感染制御認定薬剤師とは?
- 1-1 感染制御認定薬剤師の定義
- 1-2 感染制御認定薬剤師の役割
- 2 感染制御認定薬剤師取得のために
- 2-1 必要な条件とは
- 2-2 資格取得のメリット
- 3 感染制御認定薬剤師が活躍する職場とは
- 4 おわりに
1 感染制御認定薬剤師とは?
感染制御認定薬剤師とは、日本病院薬剤師会が認定している認定薬剤師のひとつであり、感染制御に関する専門知識と技術をもつ薬剤師を客観的に評価するために与えられる資格です。
感染制御を通じて患者が安心・安全で適切な治療を受けるために必要な環境に提供に貢献するとともに、感染病治療に関わる薬物療法の適切かつ安全な遂行に寄与することを目標としています。
(参考:感染制御専門薬剤師の理念と目的|一般社団法人日本病院薬剤師会)
感染症は、対応・対策を怠ってしまうと、広範囲の人々に被害を与える恐れのある疾患です。感染制御認定薬剤師は、様々な感染症の疾患や病状を理解し、治療のための薬物療法に関する知識と技術が必要とされています。
それでは、感染制御認定薬剤師の定義と役割を確認していきましょう。
1-1 感染制御認定薬剤師の定義
一般社団法人日本病因薬剤師会では、感染制御専門薬剤師の定義を以下のように提示しています。
- 1.感染制御に必要な消毒薬、微生物、耐性菌等に関する基礎知識を十分に理解している。
- 2.感染症疾患の病態と患者特性を十分理解している。
- 3.感染症治療等の使用される医療品の薬理作用、体内動態等を十分理解している。
- 4.エビデンスに基づいた感染対策を十分理解している。
- 5.施設内の感染制御に関わる評価に必要な情報評価ができ、医療関係者への情報提供ができる。
- 6.抗菌薬及び消毒薬の適正使用の推進を図るため患者個々の症状や状況に合った薬物療法や感染対策を医師などの他職種に提案できる。
- 7.適切な薬物療法に関する知識と多くの臨床経験を持ち、患者の感染症治療等を支援し、薬学的管理ができる。
- 8.感染制御に関する情報等を地域の他施設とも共有し、ネットワーク化できる。
- 9.院内感染対策チーム等に一員として、院内感染防止対策に貢献している。
- 10.感染制御領域に関する研究能力を有している。
- 11.感染症法等の関連法規を十分理解している。
以上の11項目を満たす薬剤師が、感染制御認定薬剤師として認められるのです。
1-2 感染制御認定薬剤師の役割
感染制御認定薬剤師の役割として、感染予防の基本を徹底し、適切な薬物療法が行われるような提案や情報の提供、また薬剤の管理をしていくことが期待されています。
主な仕事内容は、抗菌薬や消毒薬の適正使用、カテーテル・注射針など院内環境衛生の管理などです。
そのために、病院などの医療機関では、ICTと呼ばれる感染制御の医療チームの属し、インフェクションコントロールドクター、感染症専門看護師、その他の感染制御専門家などと共に、チームの一員として活躍するのです。
治療にもっとも効果のある抗生物質を適切に投与することによって、感染症患者の治療に貢献することができるのです。また、個々の感染症患者にどのような服薬治療が行われているのかを記録し、適正かどうか判断することも大切な仕事の一つです。特に、病原菌が耐性を獲得しないように抗菌薬の適正使用を徹底することが、重要視されています。
2 感染制御認定薬剤師取得のために
感染制御認定薬剤師の免許を取得するためには、どのような条件が必要なのでしょうか。取得のメリットとともに紹介していきます。
2-1 必要な条件とは
感染制御認定薬剤師の資格を取得するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 1.薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えている。
- 2.薬剤師としての実務経験を5年以上積んでいる。
- 3.日本病院薬剤師会、日本薬剤師会、日本女性薬剤師会のいずれかの会員であること。
- 4.日本医療薬学会、日本薬学会、日本臨床薬理学会、日本TDM学会、ICD制度協議会に加盟している学会・研究会のいずれかの学会の会員である。
- 5.日病薬病院薬学認定薬剤師、日本医療薬学会認定薬剤師、どちらかの会員であること。
- 6.施設内の感染対策委員会または院内対策チームの一員として、3年以上感染制御活動に従事している。
- 7.感染制御に貢献した業務内容、および薬剤師としての薬学的介入により実施した対策の内容を20例以上報告できている。
- 8.日本病院薬剤師会が認定する感染制御領域の講習会、および別に定める学会が主催する感染制御領域の講習会などを、所定の単位(20時間、10単位)以上履修している。
- 9.病院長または施設長等の推薦がある。
- 10.日本病院薬剤師会が行う感染制御認定薬剤師試験に合格している。
(参考:感染制御認定薬剤師確定申請資格より)
※平成27年2月14日改定の募集要項を参考にしています。最新の募集要項は、一般社団法人日本病院薬剤師会 感染制御専門薬剤師部門で確認するようにしてください。
日本病院薬剤師会が行う感染制御認定薬剤師試験の問題は、全50問。全てが選択式の問題で、選択肢は5択あります。
例えば、過去に出題されていたのは、微生物(細菌、真菌、リケッチア、クラミジア、ウイルス)の基礎知識、感染症の基礎知識、抗菌薬の基礎知識、抗ウイルス薬の基礎知識などが問われる問題が出題されています。感染症に関する問題だけではなく、基礎的な医療の」知識を問うものから、マニアックな知識まで幅広く出題されていることが分かります。
認定試験の難易度や合格基準、合格率は公表されていません。事前にきちんと準備をし、試験に臨むようにしましょう。
2-2 資格取得のメリット
認定薬剤師の資格は取得したからといって資格手当があるわけではありません。
しかし感染制御薬剤師の資格を所有していると、患者さんの感染症治療や院内感染対策チームにおいて、薬剤師の立場としての専門的な意見を述べることができるようになるのです。
また、感染制御に関する専門知識と技術を所持していることの証明になるため、他の薬剤師よりも有利に転職活動を進めることができるでしょう。
3 感染制御認定薬剤師が活躍する職場とは
資格を取得し、感染制御認定薬剤師として働く場合は、主に病院内で感染症医療チームの一員として、働くことになるでしょう。近年では、感染症に関するチームの重要性が注目されています。今後は、ますます必要不可欠な専門分野になっていくことが期待できます。
また、大学病院であれば、すでに感染症専門の医師や自分よりも感染症に関する専門知識と技術を持った薬剤師がいるはずです。指導を受けながら、経験を積むことができるでしょう。
中小病院の場合は、感染症専門の医療従事者がいない可能性も考えられます。大学病院と比較すると責任の比重は重いかもしれませんが、だからこそやりがいを感じながら仕事ができるかもしれません。
いずれにしても、感染制御認定薬剤師としての資格を生かし、院内での感染制御に貢献することができるでしょう。
4 おわりに
感染制御認定薬剤師に関して、仕事内容や資格の取得方法などを解説してきました。
資格取得のためには様々な条件があるだけではなく、実務経験や講習会への参加などもしなければならず、時間もかかります。
しかし、感染制御認定薬剤師の資格を一度取得すれば、専門的な知識と技術を持っていることの証明になるので、やりがいにもキャリアアップにもつながることは間違いないはずです。
興味を持った方は、是非感染制御認定薬剤師の資格取得を検討してみてくださいね。