今注目の在宅医療!薬剤師の役割と仕事内容、知っておきたい知識をチェック

超高齢化社会が問題視される中、患者さんが自宅で療養する在宅医療の重要性は高まっています。
在宅医療は、医師と看護師、そして介護士のみ行われるものだと思われがちですが、実は薬剤師の活躍が大いに期待されています。
医師や看護師と同行するだけではなく、医師の指導によって薬剤師が患者さんの自宅まで訪問することもあり、ますます薬剤師としての働き方は多様化し、薬剤の専門家としての役割が求められているのです。
この記事では、在宅医療における薬剤師の立場、そして役割、具体的な業務内容などを解説していきます。
在宅医療の経験は、薬剤師にとって大きなスキルになるはずです。この記事を一読して、是非スキルアップにつなげてくださいね。
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- 1 在宅医療における薬剤師の役割とは
- 2 どんなことをするの?在宅医療薬剤師の仕事内容
- 【Case1】身体が不自由で動けない…。薬を自宅まで届けてほしい
- 【Case2】複数の病院からたくさんの薬を処方された!一緒に飲んでも大丈夫?
- 【Case3】食後に飲まなければならないのに、ついうっかり忘れてしまう…。
- 【Case4】最近、錠剤が飲み込めなくなってきたので、薬の変更をしたい…。
- 3 在宅医療薬剤師になる! 必要とされるスキルとは?
- 3-1 コミュニケーション能力
- 3-2 薬学・薬剤だけにとどまらない、幅広い医療知識
- 4 在宅医療薬剤師への近道とは?
- 4-1 在宅医療の業務比率をチェック!
- 4-2 在宅療養支援認知薬剤師の資格を取得する
- 5 さいごに
1 在宅医療における薬剤師の役割とは
まずは、在宅医療における薬剤師の役割を確認していきましょう。
従来の在宅医療は、入院や外来の代わりという認識でした。そのため、医師と看護師を中心として成り立つものでした。よって、処方箋までは出されるものの、薬剤は調剤薬局で処方されるものであるという認識もあり、在宅医療には薬剤師の介入がなかったのです。
しかし、医師や看護師は、薬剤の専門家ではありません。同様に、在宅医療を行っている患者さんを支えている介護担当者やケアマネージャーも、薬剤に関する知識を持っていません。
そこで、薬剤師が在宅医療に介入することによって、患者さんや家族、介護の専門家に対して薬剤についての的確なアドバイスができるようになったのです。
また、今までの服薬指導や薬剤管理を行っていた看護師への負担を減らすことが期待されています。医師が対応していた薬に関する相談も、薬剤師が担当します。薬学的管理指導に基づく患者状態の確認とフィードバック、患者の療養状態に応じた用法・用量の調整や処方変更の提案などを行うのです。
2 どんなことをするの?在宅医療薬剤師の仕事内容
それでは、在宅医療における薬剤師はどのような仕事をしているのでしょうか?
代表的な事例と共に、ひとつずつ見ていきましょう。
【Case1】身体が不自由で動けない…。薬を自宅まで届けてほしい
まず、代表的な事例として挙げられるのが、「身体が不自由で薬局に行けないので、自宅まで薬を届けてほしい」という要望です。薬剤師が、患者さんの家まで赴き、薬を届けるのです。
高齢化、そしてライフスタイルの多様化により、子どもや孫と同居せずに独りもしくは夫婦のみで生活している高齢者が近年増加しています。加齢とともに、病気になってしまったり足腰が弱くなってしまったりして、定期的に薬局まで行くことが難しい方が多いのです。
医師による往診や訪問医療が終わると、FAXなどで処方箋が届けられます。在宅医療薬剤師は、その処方箋に基づき、医療品の調剤を行い、患者さんの自宅まで届けるのです。
状況によっては、医師に同行して患者さんの自宅を訪問し、より服薬しやすい処方内容へと改善するために話し合いをすることもあります。
【Case2】複数の病院からたくさんの薬を処方された!一緒に飲んでも大丈夫?
薬の飲み合わせと副作用の確認は、在宅医療において重要な役割です。
高齢になると複数の病院にかかることも多く、様々な薬が処方されます。処方される薬だけではなく、常用している健康食品との飲み合わせや漫然投与されている薬の副作用などのチェックも行っていきます。
また、患者さんに対してだけではなく、家族と介護担当者への服薬指導も行います。
なぜこの薬が必要なのか、そしてどのような効果や副作用があるのかなどを、根気強く伝え、教育していくのです。
食事や排泄、睡眠などを通じて体調を把握したうえで、薬の効果や影響を確認し、患者さん自身の生活の質の向上に努めることも在宅医療薬剤師の重要な役割です。
【Case3】食後に飲まなければならないのに、ついうっかり忘れてしまう…。
患者さんによる処方された薬の飲み残しも大きな課題になっています。
薬の飲み残しの原因は、薬の種類や数が多くなるとうまく管理することが出来なくなるというところにあります。その結果、「飲み残し」として薬剤が余ってしまうのです。
こうした薬の飲み残しによる経済損失は、500億円を超えると言われています。国の医療費を圧迫する原因にもなっているため、薬剤師が在宅医療に介入し、国民の薬の飲み残しを改善することが期待されています。
薬剤の管理を徹底することができれば、飲み残しによる500億円の損失が100億円にまで減少させることができると言われているのです。
具体的な仕事としては、在宅医療中の患者さんのもとに伺い、服薬状況を確認します。状況に応じて解決策を検討し、時には一包化できるものはまとめて飲みやすくしたり、整理ケースを利用して飲む薬を時間別で分けたり、印をつけることのできる服薬カレンダーを利用したりして薬の飲み残しを改善していきます。
薬剤師が残薬状況を確認し、医師と連携を取りつつ余分に薬が処方されないように管理するなど、患者さんに負担がかからないようフォローしていくことが大切です。
【Case4】最近、錠剤が飲み込めなくなってきたので、薬の変更をしたい…。
飲みやすく効き目の良い薬に変更することも、在宅医療薬剤師の役割のひとつです。
特に錠剤の薬が飲み込めない患者さんに対して、粉末状の薬や口の中で溶ける崩壊錠(OD錠)に変更するなど、医師に相談をして他の薬への変更を検討します。
患者さんが毎日服薬する薬剤を、飲み込みやすいように工夫をするのです。
3 在宅医療薬剤師になる! 必要とされるスキルとは?
在宅医療薬剤師になるためには、どのようなスキルが必要になるのでしょうか?
在宅医療における薬剤師の役割や仕事は多岐に渡ります。そのため、調剤・処方に集中できる調剤薬局での業務とは異なった、より高度なスキルが求められるのです。
それでは、どのようなスキルを身につければ、在宅医療薬剤師として活躍できるのでしょうか。
3-1 コミュニケーション能力
在宅医療の現場では、医師と看護師だけではなく、介護士やケアマネージャーなどの多くの専門家が関わってきます。スムーズに仕事を行うためには、コミュニケーション能力は欠かせません。
医師とケアマネージャーが別々にケアプランを立てているケース、両者のコミュニケーションがうまく取れていないケースなども考えられます。薬剤師が介入することによって、パイプとしての役割が期待されているのです。
また、在宅医療は、患者さんの自宅というプライべートな空間で行われます。コミュニケーションを通じて患者さんやその家族と信頼関係を築く必要もあるのです。
正確な情報と、患者さんや家族の要望を聞き出し、より良い在宅医療の業務を行うためには、薬剤師のコミュニケーション能力が必要不可欠なのです。
様々な立場の人と会話を通じて連携をし、患者さんと家族とともにすべての人と円滑に治療を進めていくよう努めていきます。
3-2 薬学・薬剤だけにとどまらない、幅広い医療知識
在宅医療薬剤師には、調剤や処方に関してだけではなく、幅広い医療知識も求められます。
調剤薬局での業務は、処方箋をもとに正確かつ迅速な処方が求められます。しかし、在宅医療における業務は、患者さんの状態に合った最適な投薬をしなくてはなりません。
更に、薬剤管理や服薬指導だけではなく、医師が同行していない場合にはバイタルサインのチェックを行い、注射器や点滴の無菌調整技術なども必要に応じて身につけなければならないのです。
服薬指導においても、調剤薬局での業務とは少々異なっています。薬剤への知識だけではなく、副作用やサプリとの相互作用、服薬方法や保管の工夫について、指導しなくてはならないこともあります。
時には、医療材料やおむつなどの介護用品に関しての相談への対応も求められます。
このように、薬剤に関する知識だけではなく、患者さんの治療が円滑に進めるために幅広い医療知識が必要になってくるのです。
4 在宅医療薬剤師への近道とは?
高齢化が更に進み、在宅医療を受ける人が増えるほど、在宅医療薬剤師へのニーズは高まります。
在宅医療に携わりたい場合は、どのようなことを行えば在宅医療薬剤師になることができるのでしょうか?
4-1 在宅医療の業務比率をチェック!
在宅医療薬剤師になるためには、在宅医療対応の薬局に転職する必要があります。在宅医療薬剤師の勤務先は、調剤薬局が多く、次に調剤施設併設型のドラッグストアが多く選ばれています。
しかし、薬局やドラッグストアの経営方針や地域性によって、在宅医療への介入度や体制支援の状況などは異なります。自分がどのくらいの割合で在宅医療に関わっていきたいのかを考えつつ、希望に叶う職場を見つけましょう。
4-2 在宅療養支援認知薬剤師の資格を取得する
在宅医療に関わっていくのであれば、在宅療養支援認薬剤師の資格取得を視野に入れておきましょう。
日本在宅薬学会では、2013年4月1日より在宅療養支援を行うすべての薬剤師に向けた認定薬剤師制度を開始しました。
この制度は、在宅医療に関する知識、技能、態度を備えた、これからの薬物療養をしっかり支えることのできる新しい薬剤師を育てようという制度です。
一般社団法人日本在宅薬学会
2015年には、初めての在宅療養支援認定薬剤師が17名誕生しています。
在宅医療を行っていく上で、必要な資格ではありませんが、スキルアップのひとつとしてチャレンジしてみてもいいでしょう。
5 さいごに
高齢者の増加に合わせて、在宅医療薬剤師のニーズは今後ますます高まることが予想されます。
医師や看護師などの医療従事者と一丸となり、患者さんや家族と関係を築いて支えていく在宅医療は、薬剤師としてのスキルアップにつながるだけではなく、やりがいに感じられるはずです。
在宅医療薬剤師として活躍したい方は、この記事を参考にし、在宅療養支援認定薬剤師の資格取得や在宅医療を行っている勤務先への転職を検討してみてくださいね。