認定薬剤師になるには? 取得方法と資格の活かし方を徹底解説

「薬剤師としてのもっと専門性の高い知識と技術が欲しい」「スキルアップのために、新しい資格が欲しい」と考えた時に、認定薬剤師の資格取得を考える方は多いでしょう。
この認定薬剤師は、一定期間内に薬学や医療に関する研修に参加して決められた単位を取得することで、その成果を客観的に認定した人に対して与えられる資格です。いわば、努力の証とも言えます。
2016年2月から新設された「かかりつけ薬剤制度」の条件のひとつにも「認定薬剤師の資格を取得していること」という項目もあり、資格を取得する人は年々増加しているのです。
この記事では、認定薬剤師のメリット、認定薬剤師になるにはどのようなことを行えばいいのか、認定薬剤師にはどのような種類の資格があるのかを解説していきます。
これから目指す方、将来的に取得したいと考えている方は、是非参考にしてくださいね。
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- 1.認定薬剤師とは
- 1-1.認定薬剤師とはどのような資格なの?
- 1-2.かかりつけ薬剤師として働くための必須条件になる
- 2.認定薬剤師のメリット
- 3.認定薬剤師になるには
- 3-1.薬剤師研修手帳を入手する
- 3-2.認定対象の研修プログラムに参加する
- 3-3.認定手数料を振り込み、申請を行う
- 3-4.認定薬剤師として登録され、認定薬剤師証が発行される
- 4.人気の認定薬剤師!資格の活かし方を解説
- 4-1.がん薬物療法認定薬剤師
- 4-2.漢方薬・生薬認定薬剤師
- 4-3.在宅療養支援認定薬剤師
- 4-4.緩和薬物療養認定薬剤師
- 4-5.プライマリ・ケア薬剤師
- 5.おわりに
1.認定薬剤師とは
認定薬剤師とは、一定の期間で研修・実技などのプログラムを受けることにより、特定の薬学・医療の分野に特化した最新の知識・技術を持っていることを客観的に証明するための資格です。
近年では、かかりつけ薬剤師制度の導入や医療保険制度の改革などの影響で、以前よりも高度な知識や技術が求められるようになりました。
その中で、最新の薬学や医療に精通し、努力をし続けているという証明になる認定薬剤師の資格は、人気があり資格取得希望者は年々増加しているのです。
2.認定薬剤師のメリット
認定薬剤師の資格を持っていると、質の高い薬剤師として客観的に認められることになります。しかし、講義を受ける時間の確保が難しいことに加え、数万~数十万のお金もかかります。そう簡単に取得できる資格ではありませんよね。
さらに、認定薬剤師の資格は有効期限があるため、定期的な更新が必要です。
しかし、認定薬剤師の資格は、様々なメリットがあり、とても人気のあるのです。
具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
・最新の知識と専門性を持っている証明になる
まず、認定薬剤師としての資格を持っていることは最新の知識と専門性を持っている証になります。ひとつの肩書きとして認められているという点は、大きなメリットになりますね。
薬剤師の国家資格は、更新の必要がなく、半永久的に所有することができます。しかし、認知薬剤師の免許は、有効期限が定められており、定期的に更新を行わなければなりません。更新のためには、常に最新の知識と専門性を持ち続けなければならないのです。
患者さんや他の薬剤師に対して「特定の分野の専門的な知識を持っている」とアピールできることは、自分自身の価値を上げることにもつながります。また、病院に勤めていれば医師や看護師からの信頼度もより高くなるでしょう。
・薬剤師として必要な最新の知識を学ぶことができる
認定薬剤師の資格を取得するには、認定団体が定めた様々なプログラムを受講しなければなりません。
日々、進歩している薬学や医療に関する最新の知識を効率よく学び、実際に活かすことができるという点はメリットと言えるでしょう。
薬学・医療従事者の一員としてより専門性の高い知識を持ち、常に高いレベルでの仕事に携わるということは、仕事のやりがいにもつながります。結果として、仕事の幅も広がっていき、結果的に薬剤師として更なるスキルアップにもなることが期待できます。
・年収が上がる可能性がある
職場にもよりますが、認定薬剤師の資格を持っていると、資格手当や昇給などの可能性があります。それだけではなく、年収が上がるかもしれません。また、転職活動の際も、大きなアピールポイントになるはずです。
認定薬剤師は、より専門性の高い薬剤師であると認めるための資格です。そのため、病院や薬局も取得を推奨しているところが多いのです。
どのような資格を持っていれば資格手当や昇給、年収アップにつながるのかは働いている職場次第です。一度、確認してみるといいでしょう。
3.認定薬剤師になるには
それでは、認定薬剤師の資格を取得するためにはどのようなことを行えばいいのでしょうか。
以下の流れに沿って、取得を進めていきます。
なお、認定薬剤師資格取得の流れは、認定制度および認定団体によって異なる場合があります。ここでは代表的な流れを紹介しています。
それでは、ひとつずつ説明していきましょう。
3-1.薬剤師研修手帳を入手する
まずは、認定薬剤師の資格申請に必要な薬剤師研修手帳を入手しましょう。
この薬剤師研修手帳は、シールを貼り付けたり、研修の内容を記録したりするものです。研修の記録を記す重要な手帳なので、大切に保管するようにしましょう。
公益財団法人日本薬剤師研修センターのHPから申し込む、FAXもしくは郵送で申し込むなどの方法で入手することができます。
3-2.認定対象の研修プログラムに参加する
薬剤師研修手帳を入手したら、認定対象の研修プログラムに参加しましょう。
認定対象となる研修プログラムには、「集合研修・実習研修」「特別講座研修」「グループ研修」「通信講座研修」「自己研修」の5種類があり、それぞれから単位を取得しなければなりません。
研修プログラムで取得できる単位数は、以上のようになります。
年間で取ることの出来る単位が決まってる研修もあるので、計画的に研修を受け、決められた単位を取得していきましょう。
3-3.シールを研修手帳に貼付し、研修内容を記録する
認定対象の研修プログラムに参加したら、シールを薬剤師研修手帳に貼付し、研修内容を記録します。
必要な単位取得数や年限は、認定する団体によってことなります。自分が認定を受けたい団体の規約を確認するようにしましょう。
3-4.認定手数料を振り込み、申請を行う
認定手数料を振り込み、薬剤師研修手帳を申請書などの必要書類と共に提出し、申請を行います。
3-5.認定薬剤師として登録され、認定薬剤師証が発行される
認定薬剤師として登録されると、認定薬剤師証が発行されます。
認定薬剤師として登録された以後であっても、数年ごとに更新をしなければなりません。更新の場合は、認証する団体ごとに更新期間や条件が異なります。きちんと確認を行いましょう。
また、住所や名前が変わった場合でも、変更の手続きが必要です。
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4.代表的な認定薬剤師の資格と活かし方
認定薬剤師の資格は、代表的なものだけでも20種類以上あります。
10種類ほどの認定団体があり、それぞれに規定があります。申請に必要な資格や、費用、研修内容や期間も異なるので、注意が必要です。
自分がどの団体から認定を受けたいのかよく考え、規定をじっくり読むようにしましょう。
数の多い認定薬剤師の中でも、ニーズが高く人気の資格を5つ紹介していきます。
4-1.がん薬物療法認定薬剤師
一般社団法人日本病院薬剤師会(JSHP)が認定する資格制度です。
1981年以降、日本人の死因第一位となっているがん。それに伴い、がん治療も日々進歩し、がんの薬物療法に関する知識も高度化しているのです。
がんに関わる最新の知識と技術を持つ薬剤師が、各施設においてがん薬物療法の向上に貢献していくことを目指しています。
がん薬物療法認定薬剤師の資格を所有していると、患者さんの抗がん治療に関わったり抗がん剤を調整したりなど、がんの専門的な治療の場で活躍することが期待できるでしょう。将来的に、がん専門の薬剤師を目指すことができます。
◆がん薬物療法認定薬剤師の申請資格
- 薬剤師免許を有し、優れた見識を備えている
- 薬剤師としての実務経験が5年以上あり、日本病院薬剤師会もしくは別に定める会員である
- 日病薬病院薬学認定薬剤師、または、日本医療薬学会認定薬剤師である
- 研修施設で、実技研修を3ヶ月以上履修している。または、3年以上、がん薬物療法に従事している
- がん領域の講習会を20単位以上履修している。(1単位2時間)
- がん患者に対して、50症例以上の薬剤管理の指導実績の報告がある
- 病院長または施設長などからの推薦がある
- がん薬物療法認定薬剤師認定試験に合格している
(参照:がん薬物療法認定薬剤師認定申請資格)
また、がん薬物療法認定薬剤師の認定期間は5年間です。がん薬物療法に関する研修に参加し、定められた単位を取得しなければなりません。
4-2.漢方薬・生薬認定薬剤師
公益財団法人日本薬剤師研修センターおよび一般社団法人日本生薬薬学会が認定している資格制度です。
近年は、漢方薬・生薬を専門に扱う漢方薬局も増加し、そのニーズも高まりつつあります。その中で漢方薬・生薬認定薬剤師は、漢方に関する基礎知識や考え方などを学び、患者さんに対して専門家として適切なアドバイスをすることが求められているのです。
◆漢方薬・生薬認定薬剤師の申請資格
- 薬剤師免許を有している
- 講義形式の9回の研修と、薬用植物園での1回の実習を合わせた「漢方薬・生薬研修会」の計10回を受講している
- 漢方薬・生薬認定薬剤師の試験に合格している
(参考:公益社団法人日本薬剤師研修センター)
更新は、3年ごと。更新の際には、漢方薬・生薬に関する研修に参加し、定められた単位を取得しなければなりません。
4-3.在宅療養支援認定薬剤師
一般社団法人日本在宅薬学会が認定している資格制度です。
近年では、患者さん本人の希望や家庭の事情などで、在宅医療希望する方が増えてきています。
在宅医療に関わる一員として、薬剤師の専門性を生かして医療に貢献していくことが求められています。調剤薬局などの在宅サービスでの薬剤管理や服薬指導を行う際も、この資格を生かすことができるのです。
平成25年に始まったばかりの認定資格ですが、多くの薬局で在宅医療が実施されているため、今後ますます注目されるでしょう。
◆在宅療養支援認定薬剤師の申請資格
- 薬剤師免許を有し、3年以上の実務経験がある
- 所定の認定薬剤師の資格を取得している
- 所定の研修講義を40単位以上取得している
- 日本在宅薬学会主催の学術大会もしくはバイタルサイン講習会の受講証明書の提示がある
- 在宅業務で5事例以上の報告がある
- 在宅療養支援認定薬剤師の試験と面接に合格している
(参考:一般社団法人日本在宅薬学会)
在宅療養支援認定薬剤師の認定期間は3年です。更新のためには、所定の研修講座受講により、毎年5単位以上、計30単位以上の単位取得が必要です。
4-4.緩和薬物療法認定薬剤師
一般社団法人日本緩和医療薬学会の認定している資格制度です。
がん治療において、痛みをコントロールする薬剤は非常に大きな役割を持し、薬剤での治療を行うためには、高度な専門性と薬剤への深い知識が必要になります。緩和薬物療法認定薬剤師は、患者さんが自らの人生を積極的に生きていけるよう、医療に貢献していくことを目的としているのです。
また、近年ガンの苦痛を和らげる緩和ケアが普及し、痛みをコントロールするための薬剤に詳しい薬剤師を求められているため、注目が集まっています。
◆緩和薬物療法認定薬剤師の申請資格
- 薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えている
- 薬剤師としての実務経験が5年以上あり、日本緩和医療薬剤師会もしくは別に定める会員である
- 申請時点で3年以上、緩和ケアチームまたは緩和ケア病棟がある病院などで、緩和ケアに従事している
- 過去5年以内に、認定対象となる講習等を計100単位以上履修している
- 薬剤師として実務に従事している期間中、学術集会で緩和ケア領域に関する学会発表を2回以上(少なくとも1回は発表者)行っている
- 緩和ケア領域薬剤師管理指導の実績について、病院勤務の薬剤師は30症例以上、保険薬局の薬剤師は15症例以上の報告がある
- 病院長または施設長などからの推薦がある
- 緩和薬物療法認定薬剤師の試験に合格している
(参考:一般社団法人日本緩和医療薬学会)
認定薬剤師の中でも取得に必要な条件の多い資格です。
緩和薬物療法認定薬剤師の認定期間は5年間です。更新の申請の際には、計100単位以上の講習の履修など、規定の条件を満たさなければなりません。
4-5.プライマリ・ケア認定薬剤師
日本プライマリ・ケア連合学会が認定している資格制度です。
プライマリ・ケアとは、幅広く国民の健康や疾病に関するあらゆる問題を総合的に解決していこうとする地域での実践活動のことを指します。
「プライマリ・ケア」という言葉への認知度は高くはありませんが、高齢化に伴い医療へのニーズも多様化しています。そこでプライマリ・ケアが地域医療を支え、今後の医療の担い手としてプライマリ・ケア認定薬剤師の活躍が期待されているのです。
◆プライマリ・ケア認定薬剤師の申請資格
- 薬剤師免許を有している
- 過去4年以内に、認定対象となる講習等を計50単位以上取得している
- プライマリ・ケア認定薬剤師の試験に合格している
(参考:日本プライマリ・ケア連合学会)
プライマリ・ケア認定薬剤師は、3年ごとの更新です。次回の更新までに、計30単位以上を取得しなければなりません。
5.おわりに
数年ごとに更新の必要があり、努力を続けなければならない認定薬剤師の資格。
しかし認定薬剤師の資格を持っていれば、薬剤師として最新の知識を学び続けられるだけではなく、自分自身の実務レベルの向上や活動の幅が広がるきっかけのひとつになるはずです。
認定薬剤師の資格は様々ですが、どの資格を取得しても自身のスキルアップにつながることは間違いないでしょう。
自分がどのような薬剤師になりたいのか、どの分野のプロフェッションルを目指したいのかをしっかり考え、認定薬剤師の取得を目指してくださいね。