【薬を紹介する絵本があった!】SNSでも話題になった「王子様のくすり図鑑」をご存知ですか?

知っていますか?薬の「絵本」
薬の成分をまとめた絵本がある、というのを皆さんご存知ですか?
それが本日ご紹介する「王子様のくすり図鑑」です。

『王子様のくすり図鑑』(株式会社じほう 1,728円)
木村美紀・著/松浦 聖・作画/石川 洋一・臨床アドバイザー

イラストも豊富でデザインも可愛らしい!
とても薬を取り扱っている書籍に見えませんね……!
主人公である王子様が、さまざまな国を旅していくというストーリーなので、薬の知識がない人にも読みやすく、手に取りやすい内容となっています。
幼少時代の私にとって、「薬」ってよく分からないし、苦いし、あまり良いイメージがありませんでした。
粉薬は漫画のように吹き出すし、不自然な甘さの液体は飲みたくないし、錠剤は上手く飲み込めず、中途半端な水で溶け出した薬の苦味を感じて吐いてしまうし……体調を崩す度に、体調回復を願う親VS薬嫌いの娘の戦いでした。(恐らく一番苦労したのは両親ですね……)
大人になった今でも苦手意識は少し残っています。
そもそも
「薬を摂取した後、自分の体の中でどのような変化が起こっているのか?」
という疑問に対するイメージができていなかったように思います。カタカナの成分名を見ても、何が良くて何が悪いのか想像しづらいし、何がどういうふうに症状に効くのかも、頭では理解しづらい———
普通の大学を出て、普通の就活をして一般企業に就職した私にとって、一番身近な薬は頭痛薬と鉄分サプリ。薬を飲んだら楽になる!という理解はあっても、「この成分が良い」なんて知識は持ち合わせておらず、飲むと何か私の知らないミラクルが体の中で起きているんだろう、たぶん———というざっくりとした理解これまで生きてきました。
薬局で薬の説明を聞いても、「いつ、何錠飲むかが分かればいいや」くらいに思っています。
そんな私が、まさか薬の本を手にとる日がくるなんて……!
今SNSで話題の「王子様のくすり図鑑」とは?
この本が直近で話題になったのはあるTwitter投稿がきっかけでした。
お子さんを連れて訪れた病院の待合室にこの本が置いてあったとのこと。
そのTwitterが数多くの人にリツイートされ、テレビでも紹介されることとなりました。
同書は、「じほう図鑑シリーズ」の第2弾です。
シリーズ第1弾となる「王様のくすり図鑑」に続き、第2弾となる本書は、より子どもにわかりやすい内容となっています。
ぱっと見の印象はゲームを題材にした絵本のように見えます。登場キャラクターも多く、カラーで文字も少なく、非常に読みやすいです。
幼少時代、「薬」の何が分からなかったのかというと、
・自分の症状の原因は何か
・自分の体の中で薬がどのように作用するのか
このあたりの想像がつかなかったのですが、驚くなかれ、この本は上記のような薬の作用がすべてキャラクター化され、かつ、ゲームのように「敵」や「味方」が分かりやすいビジュアルで描かれており、一目で関係性が理解できる構図になっています。
これはお子さんだけでなく、薬とは縁遠い大人でもつい手にとってしまいますよね。
この本を出版されている株式会社じほうは、大正11年(1922年)創業の老舗出版社です。その中でも出版事業では、医療現場で働く方々を陰から支えるべく、薬に関する情報を届けており、「月刊薬事」「調剤と情報」「PHARM TECH JAPAN」などの定期刊行物と、「治療薬ハンドブック」「保険薬事典」「薬事ハンドブック」などの書籍を発行しています。発行物を目にした方も多いのではないでしょうか?
また、このシリーズには続きがあり、第3弾として「皇帝の漢方薬図鑑」を刊行。それぞれコンセプトやイラストを変えて個性豊かな内容となっています。
そして、本の作者は木村美紀さん。東京大学薬学部を卒業され、現在はテレビ出演や講演、書籍の執筆などさまざまな分野でご活躍されています。
もちろんこれだけではありません!
この本のイラストは、なんと「聖剣伝説レジェンド オブ マナ」や、「ファイナルファンタジーX」等の制作にかかわった松浦聖(まつうらさとし)さんが担当されています。
たとえば、解熱や鎮痛剤として使われるカロナールはこちら!

賢者っぽい!(興奮)
一度でもRPGゲームのプレイ経験がある人ならもちろん、そうでない人も、少しテンションが上がりませんか?「薬を擬人化した」と、文章で書くとこれだけなのですが、イラストでキャラクター性が垣間見えると急に親近感がわき、想像が膨らみます。薬によってどのような作用が起こるのか、解説や元素記号だけでは伝わりづらい内容も、こうして視覚的に情報が入ってくると分かりやすいですよね。
また、戦うウィルスによってフィールドも変わってきます。

ヘルペスと戦うページはこちら!
イラストの横に症状の特徴についても書いてあり、巻末にはウィルスに関する詳細ページもあるため、こうした知識も分かりやすく学ぶことが出来ます。言葉だけでは難しいものも、イラストやデザインなどで「可視化」されることで、理解しやすい内容になっています。
「薬って面白い」を誰にでも
本のあとがきで、著者の木村さんは下記のように記されています。
“セリフを声に出して、親子で一緒に楽しんでもらえたら。くすりが苦手な子が、少しでも前向きな気持ちになってくれたら。薬剤師になりたいという夢のある子が、くすりの世界に興味を持ってくれたら。そんな願いもこめて…。”
薬を知らない人にとって、特に小さなお子さんにとって、よくわからない「薬」という存在はある種恐怖かもしれません。(冒頭でお話しした、幼少時代の自分の言い訳みたいですが。笑)
何のために口にするのかわからないもの(しかも苦いこともある)に対して抱くイメージはポジティブなものばかりではないと思います。
そんな時に、この本で「自分の中の悪い菌と、薬の成分が戦ってくれてる!」というイメージができると、その恐怖や薬への考え方って変わってくると思うのです。(たとえ苦かったとしても!)
私が小さい頃にこの本と出会っていたら、薬の成分と一緒に戦うような気持ちで、頑張って飲んだ……かも……と、幼少期に思いを馳せながら読みました。
何かキッカケがなければ、日常で薬について学ぶことはなかなかありません。幼少時代にこの本に出会えたお子さんは、きっと新しい価値観とイメージを持って、その先も薬とかかわることができるのでは?と思います。身近なお子さんへのプレゼントとして、この機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?
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