資格者クローズアップ③ ココカラファイン薬局新通店 薬剤師 未病から罹患後まで、お客に長く寄り添い信頼築く 地域連携図り、よりオープンな選ばれる薬局へ 【月刊MD】 – 薬プレッソ

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資格者クローズアップ③ ココカラファイン薬局新通店 薬剤師 未病から罹患後まで、お客に長く寄り添い信頼築く 地域連携図り、よりオープンな選ばれる薬局へ 【月刊MD】

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全国でも院外処方率が高く、調剤薬局の激戦区エリアともいえる新潟県。かかりつけ薬剤師、健康サポート薬局制度が施行され、各社が新しい薬局のあり方を模索するなか、本部で得た学びを、健康相談会を通じて店頭と地域に還元しているココカラファイン薬局新通店の薬局長・守橋香織さんを取材した。

▼目次

 

処方せん業務から地域へ 国の政策が後押し

 近くには新潟大学のキャンパスが広がる新潟大学前駅から車で5分ほどの距離にあるココカラファイン薬局新通店。225坪のドラッグストア併設型薬局だ。新潟県は、院外処方率が全国的にも上位で(2014年時点で院外処方率79.2%)、いわゆる門前スタイルの薬局も多い。同店の付近にも総合病院があり、その向かいには3店の薬局が立地する。

 県内にあるココカラファインの調剤薬局は5店舗。そのうち4店舗に在籍するかかりつけ薬剤師の一人が、同店の薬局長・守橋香織さんだ。 薬剤師としては8年目、新通店で4年目を迎える。 2016年4月から施行された新制度について守橋さんはこう語る。

「これまで処方せん業務がメーンでしたが、DgS併設のため以前からサプリメントや健康食品の問い合わせや相談は多くありましたので、薬剤師がもっと外に出ていく必要性は感じていました。今回の政策によって、積極的に地域に出て活動することもできるようになった。国からの後押しがあったというのは大きいですね」

 

新制度と意識の変化 薬剤師は選ばれる立場に

 地域住民が薬や健康について気軽に相談できる存在となるには、幅広い相談に応じられる知識と、信頼関係を築いていく必要がある。

「健康サポートのために重要なことは、お客さまを患者さまにしないこと。処方せんを受ける前に、疾患予防の啓発と支援をし、罹患(りかん)した場合は、薬物治療で支援を続ける。これまでよりも長く深く関わることで、薬剤師としてのやりがいにつながっていくのではないでしょうか」

 現在では、薬局に用はなくとも、買物のついでに顔を出してあいさつしてくれるようになった地域住民や、「シャンプーを一緒に選んでほしい」と声を掛けてくる高齢者もいるという。

「同時に、薬剤師はお客さまから選ばれる立場にもなりました。接遇面でも、お客さまの満足度を高めるために一層意識するようになりましたね。また、知識だけでは信頼される薬剤師にはなれません。一人の人間として地域住民の方に心を許してもらえるよう、感性も磨いていきたいとおもいます」

 

糖尿病に関する健康相談会 実際に実行できる対策意識

 定期的に店舗で企画している取組みのひとつが健康相談会だ。新通店では、2016年度は4月から年間計3回実施。季節に合わせ、7月には熱中症対策、11月には世界糖尿病デーに合わせた糖尿病予防対策を実施した。3月には誤嚥予防の健康相談会を計画中だ。このほかに、骨密度の測定やお薬相談会なども実施している。過去の骨密度測定会では2時間に約20人を測定。「はじめてでいい経験になった」「また来たい」など地域住民の反応は上々だという。

 11月の糖尿病予防に関する相談会では、糖の吸収を抑えるトクホ商品の紹介、関連商品の説明だけにとどまらず、糖尿病に罹患した場合のリスクや日常的に行える食事療法などを、パンフレットやクイズを交えながら解説。予防の意識を高めたという。指導しても実際行えなければ意味がない。一緒に取り組んでいけることを探していくのがポイントだ。

 

在宅訪問は大きな柱に 認知拡大もサポートの一環

 DgS併設の強みは、OTCや健康食品なども含めた一元管理がしやすく、病院と接点を持たない地域住民への健康意識にもリーチしやすい点にある。食品や日用品を買いに来店したついでに、調剤にも気軽に立ち寄ってもらうきっかけづくりができる。

 イベントによっては、普段薬局に足を運ばないお客にも、健康への気付きを促せるように、店舗でチラシ配布や事前のポスター掲示を行っている。また、健康診断を受ける機会が少ない主婦には、気軽に子供連れで参加できるよう、薬局内にキッズコーナーをつくるなど工夫を凝らしているという。

 そしてイベント同様、認知を拡大し相談の入り口をつくる必要性を感じている分野が在宅訪問だ。超高齢化社会を迎え、在宅での療養は必然的に増えてくる。調剤にとって在宅訪問は重要な業務のひとつになる。一方で、在宅訪問という制度があることはあまり知られていない。昨年、同店で医師と協力して行った地域住民への説明会では、在宅訪問を知らず介護に不安を抱いている家族も多かったという。地道に周知していくことも、大切な健康サポートのひとつだと守橋さんは考えている。

 

未病段階の重要ケアは歯周病対策の口腔ケア

 未病段階でもできるケアとして、同店が力を入れているのが歯周病対策の口腔ケアだ。歯周病は、成人の7割以上が罹患しているもっとも多い感染症ともいわれており、糖尿病、誤嚥性肺炎とのつながりも明らかになってきている。

 守橋さんは、かかりつけ薬剤師として担当する糖尿病治療中の患者に対しても、プラークを取り除くための正しいブラッシングの方法やマウスウォッシュの利用など、ケア方法を説明しているという。口腔ケアは生活習慣に密接に関係するうえ、予防も可能だ。併設店舗の商材を有効に活用することもできる。

「今後は、ケアマネジャーや歯科医師など外部と連携し、患者さん向けの健康相談会を企画したいと考えています。まず、店舗でやっている取組みを知ってもらって、外部の方にも活用していただければと。地域包括ケアの体制に向けて連携を強めていきたいです」

 

幅広い分野で研修体制 店舗でアウトプット

 こうした店舗の取り組みを支えているのが、本部の教育・研修体制だ。ココカラファインでは、新潟県で開催している「育児まるごと応援フェア」など、企業規模で地域を巻き込んだイベントにも取り組んでいる。イベント開催時には、店舗スタッフが積極的に参加できるような体制づくりに力を入れている。

 各店舗で行われる健康相談会の内容や企画は店舗に任されているが、そのタネとなる知識は、本部が企画する専門研修で学ぶことができる。糖尿病、認知症、漢方薬、眼科領域、がんと疼痛(とうつう)緩和など、年間を通して幅広いテーマで開催される。知識をインプットするだけでなく、実際に店舗でアウトプットしていけるようなカリキュラムが組まれている。また、調剤の薬剤師も、DgS店舗と共通の研修を一定期間行っており、OTCの知識も広く身に付けることができる。全国の店舗スタッフと交流、情報交換できる研修は、よい経験になっているという。

 

病気・障がいによる隔てのないだれにでも開かれた薬局へ

 今後、守橋さんが目指すのは、だれにでも開かれた薬局だ。守橋さんは、薬剤師2年目で耳の不自由な患者と交流したことをきっかけに、手話の勉強を続けている。昨年末には手話奉仕員試験に合格。手話での服薬指導も行っている。

「手話を通して、障がいへの理解も深まりました。耳の不自由な方は、手話であいさつをしただけでも、興味をもってくれたとうれしくおもってくださる。心を開くきっかけになります。大切なことは、さまざまな患者さま、お客さまに寄り添う気持ちを持つことだとおもっています」

 新通店では、健康をサポートできる環境を継続していくために、薬学部5年生の実務実習の受け入れを行い、後輩の薬剤師指導にも取り組んでいる。未病の人、疾患のある人。障がいのある人、健常な人。だれにでも開かれた薬局、だれもが気軽に立ち寄れる薬局づくりで、地域とのさらなる信頼関係を構築していく。

ココカラファイン薬局新通店

所在地/新潟県新潟市西区新通南2-18-24 店舗面積/薬局27.9坪 DgS225.3坪

月刊マーチャンダイジングの発行元である株式会社ニュー・フォーマット研究所および関連取材先の許可を得て、転載しております。

転載元:月刊マーチャンダイジング 2017年4月号 28〜29ページ
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薬プレッソ編集部

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