資格者クローズアップ② トモズ クイーンズ伊勢丹仙川店 管理栄養士・薬剤師 薬剤師と管理栄養士が連携して患者を栄養指導 見えてきた健康サポートの新たな可能性【月刊MD】 – 薬プレッソ

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資格者クローズアップ② トモズ クイーンズ伊勢丹仙川店 管理栄養士・薬剤師 薬剤師と管理栄養士が連携して患者を栄養指導 見えてきた健康サポートの新たな可能性【月刊MD】

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トモズではこれまで骨密度の相談会を中心に健康サポートを行ってきた。この取組みに加え、2017年からは処方せんを持ってきた患者に薬剤師から管理栄養士を紹介する形で、栄養指導を行っている。疾患とも密接な関係のある食を薬剤師と管理栄養士でどのように連携して指導しているかを取材した。

▼目次

 

栄養指導が有効な患者に個別化された具体情報を提供

 現在、トモズでは管理栄養士が店舗を巡回する形で、骨密度相談会を行っている。測定日の2ヵ月ほど前から店内ポスター、チラシなどで告知、平均して事前に20〜30人の予約がある。当日も管理栄養士が積極的に声掛けして店舗の規模にもよるが、多いときで1日60人ほどを測定して、数値に基づきアドバイスする。

 このほかにも管理栄養士が体組成計を使った相談会を行っており、体重、体脂肪の測定値から生活習慣病の予防に有効な栄養、食事のアドバイスなどをしている。

 管理栄養士による測定会に加えて、新たな試みとして取り組んでいるのが、薬剤師と連携した、処方せんを持ってきた患者に対する栄養指導である。

 生活習慣病など食生活とも関連する疾患を持つ患者に対して、薬剤師が栄養指導を受けることを推奨、患者の承諾を得たあと、管理栄養士が栄養、食事指導にあたる。

 実際の指導はどのように行われているのだろうか。

「スマホなどを使って事前に何食分かの食事の写真を送ってもらい、それをもとに栄養価計算します。体重からしてエネルギーの取り過ぎなどと患者さんが来店する前にあらかじめ傾向を分析。患者さんが来店されたら、肥満傾向にある場合、食べ過ぎないためのポイントを探し、なるべく継続できる提案をして次回来店時までにどう変わるかを見るようにしています」(管理栄養士/海津真純氏)

 薬剤師の立場からこの連携をどう見ているかを木次理美さんに聞いた。

 「多くの患者さんがいらっしゃる生活習慣病や骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は食事との関係が密接です。薬剤師も栄養に関する知識はありますが、具体的なアドバイスまでは難しい。たとえば、カルシウムを取るために小松菜がいいですよとはいえても、どれくらい、ほかのどの食品と組み合わせてまでは説明できません。管理栄養士が的確な情報を提供してくれてとても助かっています。現代は情報があふれていますが、欲しいのは自分のための個別化された情報です。それを提供できることは薬局の強みにもなります」

 食は好き嫌いがあり、個人により習慣も異なる。一般的な知識が必ずしも通用せず、相手に合った情報提供、栄養指導が必要となる。

 たとえば、海津氏はカウンセリングを次のように進めていく。

 「カルシウムの摂取目安が1日650mgなので、朝牛乳1本飲むならそれで250mg、納豆も食べるならプラス50mg、お豆腐で100mg。いまの食事で1日400mgくらい取れているのであと250mgどうしましょう。食品もあるし、こういうサプリもあります。サンプルがあるので試してみますか?」

 このように、実際の食事内容から瞬時にカルシウム量を換算して不足分に関して食の提案、サプリ(商品)の提案など複数の選択肢を示す。情報が具体的だと行動に移しやすく、対面で専門家に指導されることで患者のモチベーションも上がる。

 

DgSでの栄養指導には大きな潜在ニーズがある

 薬剤師との連携において管理栄養士どのような点に留意すべきだろうか。

 「疾患には踏み込み過ぎないよう注意しています。疾患自体で頼るべきは医療機関であり医師です。かといって、まったく疾患に触れないわけにもいきませんので、そこは医療機関の領域を侵さないよう慎重に気を遣っています」(管理栄養士/岡山和志氏)

 岡山氏によると、トモズの管理栄養士から指導を受けている患者の中には、病院からも栄養指導を受けているケースがあるので、患者が混乱しないよう細心の注意を払っているという。

 医療機関による指導と食い違いのないよう注意していることはあるか、指導の間に違いはないかを海津氏に聞いた。

 「医療機関の栄養指導と自分の指導の間にとくに違いは感じません。少し意外だったのは、私が経験している限りですが、病院の指導もそれほどこまめにプログラムされているわけではないということです。資料を渡されてこれを参考に食事に気を付けてください、といった指導もあります。そう考えると、ドラッグストア(DgS)で処方せんを持ってきた人に栄養指導をすることには、大きなニーズが隠れているようにおもいます」

 管理栄養士が配属されている大きな医療機関は家の近くにあるとは限らない。処方せんを持って行く近所の薬局、DgSで栄養指導を受けることができれば、長続きするだろうし、相談もしやすい。

 トモズクイーンズ伊勢丹仙川店では、処方せんを持ってきた患者の薬歴に栄養指導の内容を記入し、その後の経過を薬剤師からもチェックするようにしている。それに加えて、栄養指導専用の記録シートもあり、管理栄養士はそれをもとに継続的に一人の患者の食事内容や体重など体の変化を管理している。

 

会社内に「栄養課」を設置すれば管理栄養士の活躍の場が広がる

 管理栄養士の今後の可能性について海津氏、岡山氏に聞いた。

 「食を強化するDgSが増えています。たとえば、『トモズ管理栄養士監修 美味しい健康弁』など商品開発へ関わることも管理栄養士の役割だとおもいます」(海津氏)

「DgSの中に『栄養課』のような部署をつくり、そこを起点に部署として薬剤部と連携を図れば、薬剤師と連携した患者さんの栄養指導も発展するだろうし、在宅医療もスムーズにいくのではないでしょうか。その形が進化していけば、調剤はもとより未病・予防も含め健康を総合的にお世話できるかかりつけ薬局になれるとおもいます」(岡山氏)

 薬剤師の立場から管理栄養士との連携について、留意すべき点、可能性について木次さんは次のように語る。

 「管理栄養士に何ができるか、仕事の内容は一般の生活者にはまだ十分に認知されていません。認知度を上げるのは薬剤師の役目です。患者さんに栄養指導を受けることを勧めることはもちろん、たとえば、会話の中でご主人の尿酸値が高いという話が出れば栄養士に食事のアドバイスを受けてみてはどうですかと勧めてもいいし、管理栄養士の認知度を上げる活動は積極的にしていきたいとおもっています」

 薬剤師を起点に管理栄養士が栄養指導にあたり、患者の健康を食事から総合的にサポートしていく。トモズではこの新しい取組みを始めたばかりだが、その可能性の大きさ、展開の余地を現場で働く資格者たちはたしかに感じている。

 

都市部での在宅調剤に大きなニーズ 組織を拡充してこれに備える

取締役 薬剤部兼営業推進部分掌役員 山口義之氏に聞く

 トモズが企業として、健康サポート機能を含む今後の地域医療にどのように向き合うのかを、薬剤部の分掌役員である山口義之氏に聞いた。

 トモズは150店舗のうち102店舗で調剤事業を運営しており、国の求める健康サポート薬局を実施できる環境がほぼ整っている。

 2016年の夏ころから個宅への在宅調剤への対応を進めており、この半年間で17店舗で20人ほどの新たな在宅患者の処方せんに応えている。

 トモズの立地エリアである東京の都市部には在宅の患者が多く、意外なほどにニーズが高いことがわかった。今後は組織や人材を拡充して在宅調剤、あるいは在宅の患者の生活を支えるような物販にも注力していく。

 新たな試みとしては、薬剤師が生活習慣病患者を中心に食事指導をする体制を構築中。カロリー計算をもとにアドバイスして食事の改善や健康食品を提案していく。また、2017年2月オープンの池尻大橋店では「トモズラウンジ」というテーブルと椅子があるスペースを設け、セルフによる健康チェックや健康相談会などのイベントを行う予定。健康サポート機能の強化で地域貢献と調剤事業へのロイヤルティー向上を図っていく。

トモズクイーンズ伊勢丹仙川店

所在地/東京都調布市仙川町1-48-5 クイーンズ伊勢丹2F 店舗面積/75坪 専門家体制/薬剤師1人、管理栄養士2人(測定時)

月刊マーチャンダイジングの発行元である株式会社ニュー・フォーマット研究所および関連取材先の許可を得て、転載しております。

転載元:月刊マーチャンダイジング 2017年4月号 26〜27ページ
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薬プレッソ編集部

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