店舗リポート② QOLサポート クオール薬局京王八王子店 多彩な測定機能、OTC医薬品、健康食品の販売 処方せん応需に加え、生活者の健康ニーズに幅広く対応【月刊MD】

▼目次
- 1.処方せん応需だけでなく継続的に利用できる薬局
- 2.健康チェックから物販まで健康を守る幅広い機能を兼備
- 3.「処方せんなしで気軽に入れる」まずは、その情報の周知を図る
- 4.能力や技術だけでなく薬剤師の意識が進化しつつある
処方せん応需だけでなく継続的に利用できる薬局
「健康サポート薬局」とは、2016年4月から「医薬品医療機器等法」という法令の中で位置付けられた公的な名称で、届け出によってこの名称を名乗ることが認可される。QOLサポート京王八王子は、届け出をして公的に「健康サポート薬局」と名乗れる薬局である。
服薬情報の一元管理、24時間対応などが可能な「かかりつけ薬剤師」の勤務、所定の薬効のOTC医薬品の在庫などいくつかの要件があるが、法令の中では「患者が継続して利用するために必要な機能及び個人の主体的な健康の保持増進への取組を積極的に支援する機能を有する薬局」と定義づけられている。
つまり、処方せんを持ってきたときだけ利用できるのではなく、健康の保持増進のため日常的に「継続して利用」できることがポイントである。処方せん応需を本来の業務とする調剤薬局チェーンにとっては、大幅な守備範囲の拡大を伴うチャレンジとなる。
健康チェックから物販まで健康を守る幅広い機能を兼備
QOLサポート京王八王子は2016年6月にリニューアル、前身である保健調剤薬局は2011年からこの地で営業しており、合計6年間地域に密着した活動を続けている。クオールでは「QOLサポート」の名を冠した健康サポート薬局を地域のニーズなど見ながら適宜出店していく予定で八王子はその第1号店。第2号店が2016年11月1日に田町に開局された。
薬局内は通常の処方せん薬の受け渡しカウンター、相談カウンター、待合スペースに加え、衛生材料、介護用品、健康食品などの商品を陳列するゴンドラ、測定ブース、セミナー室が設置されている。物販の在庫アイテム数はOTC医薬品を含めおよそ3,000品目。
また、測定機能が充実しており、「血圧」「骨の健康度」、体重や体脂肪などの「体組成」、セルフ採血による「血液」などの測定ができる。常時5人勤務している薬剤師のほかに管理栄養士1人が常駐し、測定とその後の食事、運動などの相談を担当している。管理栄養士は店内で販売している健康食品の相談にも乗るなど、活動範囲が広く、役割も多彩なキーパーソン、ユーティリティプレイヤー(多機能選手)である。
店舗奥のセミナールームには、20人ほどが収容でき、季節に応じた感染症対策や健康、食事に関するミニ講座、健康相談会が月に1回開催される。地域住民へ向けた健康、予防情報の発信源となっている。
「処方せんなしで気軽に入れる」まずは、その情報の周知を図る
2016年1月に赴任し、準備段階から現場の責任者としてこの薬局を任されている小栁悟薬局長に、これまでの利用状況や利用者の反応などを聞いた。
「調剤薬局には処方せんがないと入りにくいというのがこれまでの常識でした。しかし、健康サポート薬局では、処方せんがなくてもOTCや健康食品などの買物のために、あるいは血圧測定、簡易血液測定のために来店いただいてもいい、これまでと異なる機能を持った薬局です。地域の人にとって健康維持、相談のため、処方せんなしで気軽に入ってこられるファーストアクセスの場をご提供したいとおもっています。また、それができる場であることを周知させることが重要です。
そのためにも、調剤でお待ちの患者さまに測定してみませんか?など積極的にお声掛けをしています。測定してみようという方には測定後、管理栄養士もしくは薬剤師がアドバイスしたり相談に乗るなどして、直接お話しする機会を設けるようにしています」
小栁氏によると、簡易血液検査(有料/1項目1,000円、2項目1,500円、いずれも税別)はその場で10〜15分待てば結果が出るので、健康チェック、生活改善のよいきっかけになっているという。持病のある人、予防を心掛けている人の中には定期的に簡易血液検査に訪れる人もいる。
相談を受けるとき、アドバイスをすると きは薬剤師の○○です、管理栄養士の ○○ですと、資格名と氏名をセットにして 自己紹介する。利用者の中には、薬の ことだけでなく、薬局に管理栄養士がい て、食事や運動のことまで相談できるこ とに驚く人も少なくない。小栁氏は驚く 人が早く減り、健康サポート薬局を気軽 に利用し、日々の健康維持に役立てるよ う、声掛けや情報発信に努めている。
能力や技術だけでなく薬剤師の意識が進化しつつある
QOLサポート京王八王子では、自動で薬をピックアップする「ロボピック」という調剤ロボを導入。分包作業も自動化されている。薬剤師の作業負荷をなるべく下げることで、その分薬剤師は調剤室を出て、来店者とのコミュニケーションをとることが求められる。
「これまでは、処方せんを持ってきた患者さまの中で作業の順番、優先順位が決まっていましたが、この薬局では、処方せんが混んでいるときに、簡易血液検査を希望するお客さまも見えるし、OTCの質問をされることもあります。順番に処方せんだけに対応するのではなく、患者さま、お客さまに不都合や不公平がないように優先順位を考える必要があり、薬剤師にとっていままでに経験したことのない忙しさがあります」(小栁氏)
従来の薬剤師の業務から、守備範囲が大幅に拡大したこの薬局で、薬剤師の成長を感じるかを小栁氏に聞いた。
「最初から積極的にコミュニケーションして健康サポートに取り組みたいという薬剤師が多かったのは事実です。半年たって薬剤師たちの言動を見聞きしていると、もっと相談だけでもいいので来てほしいとか、健康サポートに関する言動が出るなど、能力や技術ではなく、 意識がどんどん変わってきていることを実感します。
処方せんだけの薬局では時代のニーズに応えることが難しくなっています。セルフメディケーションから高度な薬物治療、そして看取りまで、その方に合った提案ができる薬局、薬剤師が必要とされています。処方せんの薬の説明、相談が必要な方から、OTCが有効な方もいれば、情報だけが必要な方もいるでしょう。医師、医療機関、行政との連携が必要な局面もあります。健康のことなら、どの立場からでも提案できる、そういう薬剤師が今後求められていくのだとおもいます」
これまで、調剤業務に特化してきた薬剤師、調剤薬局が持っている知識や経験をいかに未病・予防の領域に振り向けられるか、日本 人の健康維持に関わる大きなチャレンジがこの薬局で続いている。
QOLサポート クオール薬局京王八王子店
所在地/東京都八王子市明神町4-7-14 売場面積/90坪 専門家体制/薬剤師5人 管理栄養士1人