薬剤師の派遣やパートの掛け持ちはしてもいい? 掛け持ち勤務のポイントとは?

「パートか派遣での調剤薬局・ドラッグストアを探しているが、勤務日が限られていたり勤務時間が短かったりする。2つ組み合わせることはできないだろうか」
「すでに調剤薬局で正社員として働いている。ただ、もう1カ所パートでの働き口を探したい」
薬剤師の働き方が多様化している今、このようなお悩みを持っているという方も多いでしょう。“ダブルワーク”には、もちろんメリット・デメリットがあります。また、気になるのは、「就業規則などに違反しないか」ではないでしょうか。
「派遣の掛け持ち」や「パートの掛け持ち」のメリットとデメリット
もちろん、メリット・デメリットはどんな職場と職場で掛け持ちするか、それはどういった目的からかで異なります。個人ごとの能力や性格の差でも違いが出るかもしれません。しかし、一般的には次のようなものを考えておけばいいでしょう。
メリット
最もわかりやすいのは「収入が増える」でしょう。ほかには次のようなものがあります。
- ○パートや派遣などの非正規雇用だけで働いている場合、契約切れで急に職を失って収入が途絶えたり、勤務日を減らされて大幅な収入減になったりする可能性も高い。2カ所かそれ以上で働いていれば、リスクが小さくなる。
- ○曜日や時間帯が限定で、しかも自分の希望が通る職場を組み合わせて掛け持ちをやる場合、無駄になる時間が少なくなり、収入を増やしやすい。
- ○いろいろな職場や職種、業務内容を経験したい人の場合、短期間でそれが実現できる。
デメリット
一方、代表的なデメリットは次のようなものです。
- ○職場間の移動に時間がかかり、通勤時間が長くなる。その分自由時間や睡眠時間を削ることにもなりかねない。
- ○違う職場や異なる業務内容を同時期にこなすことで、疲れがひどくなる。キャリアアップするにも時間や集中力が分散される。
- ○正社員としてだけで働いている場合、源泉徴収されているので特に納税の手続きは要らない。しかし、副業を持つことで面倒な確定申告が必要になる。
どうする「副業禁止」
たとえ、自分自身は掛け持ちで働く気満々でも、職場によっては「副業禁止」としている場合があります。そこで掛け持ちをあきらめてしまう人もいるかもしれません。
すでに働いているのならば、まずはその勤務先の就業規則をチェック
すでにどこかで働いていて、しかもそれが正社員や正規の団体職員の場合、まずは就業規則をチェックしましょう。労働者を常時10人以上雇用している会社はその作成と労働基準監督署への提出が義務になっているので、よほどの小さな会社でない限り用意されているはずです。地方公務員の場合は、「就業規則」ではなく同様の内容が「地方公務員法」や「条例」で決められています。
実は、就業規則などに「副業禁止」とあっても、基本的には会社との労働契約はあくまで就業時間内での拘束となり、「職業選択の自由」(日本国憲法第22条第1項)の趣旨からも法的な拘束力はありません。
ただし、会社の副業制限について一定の合理的理由が認められる(勤務時間の業務に支障をきたす、企業の品位を落とすなど)場合もあります。また、副業について何も書いていなくても、雇用者が容認しているとも限りません。
このように、決定的なものではないとはいえ、就業規則は雇用者のスタンスを知る最初の手がかりです。必ず目を通すようにしましょう。
非正規雇用にも就業規則のチェックは必要
非正規雇用(パート・派遣・契約社員)で働いている場合は、就業規則とは無縁と考えられがちです。しかし、本来、就業規則は非正規雇用までカバーする内容にしておかなければいけません。実際に、パート用のものなどを別に作っている会社やお店もあります。
こういった状況なので、今働いているが非正規雇用の場合でも、就業規則のチェックは欠かせません。
この際、間違いがちなのが派遣の場合です。あなたを雇っているのは派遣先ではなく、そこの就業規則とも関係はありません。薬剤師の場合でいえば、調剤薬局やドラッグストアといった派遣先ではなく、派遣元(人材派遣会社)の就業規則をチェックします。
また、正社員などの本業があって、それにプラスして非正規で働く場合でもそこの就業規則はもちろん適用されます。結局は、「正社員とパートの掛け持ち」「パートとパート」「パートと派遣」といったどのパターンでも「関係するすべての雇用主が出している就業規則を全部チェックしたほうがいい」ということです。
とはいえ、これらはどちらかといえば「念のために」といった程度の話です。現実には、パートや派遣社員に対して掛け持ちを禁止していることはほとんどないでしょう。
掛け持ちの場合の残業手当はどうなる?

実際に掛け持ちをする場合に、全く気にしていない人も多く、気にしようにもよく理解できなかったりするのが、「残業手当」です。
残業手当とは
労働基準法では、「1日の労働時間は8時間以内。1週間では40時間以内」と決められています。しかし、労働組合など労働者側の代表が承諾すれば、これ以上の時間外労働をすることも可能です。これを36協定といいます。
その超えた時間分は最低でも通常の25パーセント増し(1.25倍)の賃金を支払わなければいけません。この割増賃金がいわゆる残業手当です。
掛け持ちの場合、労働時間はトータルする
「1日8時間・1週間40時間」といった労働時間は掛け持ちで働いていてもトータルして計算されます(労働基準法第38条第1項)。
仮に(1)「正社員として8時間働いて、その後2時間ドラッグストアで店員をする」、あるいは(2)「A人材派遣会社の派遣社員として1日のうち5時間はドラッグストアで、さらに5時間をB人材派遣会社の派遣社員として調剤薬局でも働く」といった場合、いずれも残業時間は2時間となり、雇用者はその2時間分の残業手当を支払わなければいけません。これは正社員・人材派遣・パートのどの組み合わせでも同じです。
その残業手当を支払う義務があるのは、雇用者の中でもその残業になる原因を作ったところです。例えば(2)の場合、A人材派遣会社の派遣社員として5時間働いているのを知っていて、あとからB人材派遣会社が5時間分の契約をしたのならばB人材派遣会社です。両方の契約が結ばれた後に、合計で8時間を超えることを知っていながらA人材派遣会社が労働時間を3時間から5時間に延長したのならばA人材派遣会社です。
掛け持ちの残業手当は実際には支払われない?
しっかりと法律に義務として定められている残業手当ですが、「掛け持ちの場合には実際にはほとんど支払われていないのでは」と見る人が少なくありません。それには次のような理由があるようです。
- ○残業手当の支払いが必要になることが雇用主側に知られると、新規採用や契約更新でも不利になるかもしれない。そのため、掛け持ちをしていることや残業手当が必要な長時間働いていることを労働者自身が申告しない。
- ○雇用主からすると、自分のところ以外の労働時間まで確認する必要がある。しかし、現実には困難。
もらえないのは、残業に当たる時間分についての、その割り増し分25パーセントです。「せっかくの権利を放棄するのはばからしい」とみるか、「その分がなくても、掛け持ちには十分にメリットがある」と考えるかは難しいところでしょう。
派遣、パート・バイトはいつまで続けられる?
よく、「派遣やパート・バイトは、正社員と違い雇用が不安定」といいます。具体的には、ほぼ「働ける期間が短い」の意味と考えていいでしょう。特に派遣では、1カ月から3年と法律の上でも決まっています。
派遣の場合
最短が1カ月になるのは、労働者派遣法で1カ月未満の契約が禁じられているからです。
実際の求人の多くが数カ月や1年といったものです。ただし、派遣先(調剤薬局やドラッグストアなど)と派遣元(人材派遣会社)が希望し、派遣社員(薬剤師)も同意すれば契約を更新する形での延長もありえます。とはいえ、無制限ではなく、やはり労働者派遣法で次のように決められています。
(1)派遣労働者個人に対する期間制限=ある個人が、ひとつの派遣先の同一事業所・同一部署で働けるのは3年まで。
「同一事業所」「同一部署」がやや理解しにくいかもしれません。たとえば「チェーン展開しているドラッグストアのある支店で、調剤と接客をやっている」とすると、確実に「その状態は3年が限度」です。
(2)派遣先に対する期間制限=同一事業所・同一部署が派遣社員を受け入れられるのは3年まで。
「A派遣社員が2年勤めた後、同じ仕事をしてもらうためにB派遣社員が来た」というのならば、Bさんは最大でも1年しか勤めることができません。ただし、派遣先の薬局やドラッグストアが過半数労働組合等から意見を聴いた上であれば、3年を限度として延長することができます。
このような決まりがあるのは、政府にすれば人材派遣をあくまで臨時的な働き方・雇い方と考えているからです。
一方で、なかなか当てはまる人は少ないのですが、「人材派遣会社との契約が無期雇用になっている」「派遣労働者が60歳以上」などの場合は例外扱いになり、個人に対しても派遣先に対しても期間制限はありません。
パート・バイトの場合
パート・バイトの場合は法律の上での期間制限は特にありません。
ただし、人材派遣の場合も同様ですが、正社員ではなくパートなどでの募集をするのは「曜日・時間帯・期間を限って人手が必要になる」「特定の業務内容だけ、人手を補強したい」といった理由が多いことは覚えておきましょう。
たとえば、海水浴場近くのドラッグストアならば夏だけ店員を増やし、その増員分はパート・バイトを当てているかもしれません。あるいは、新規開業の調剤薬局ならば、「今後の忙しさが予想しきれない。まずは、パート・バイトのスタッフを多めにしてスタートする」といったこともあるでしょう。雇用期間が短くなりがちなのは仕方のないところかもしれません。
変化しつつある副業に対する考え方

掛け持ちをし副業を持つのは、「パートとパート」、あるいは「パートと派遣」といったように、非正規雇用の人たちに限った働き方とこれまでは考えられてきました。
一方、正社員(正規雇用)、なかでも大企業・名門企業の正社員には不要とされ、実際これらの就業規則では副業を明確に禁止するのが普通でした。また、それら企業以上に厳しかったのが公務員です。しかし、すでにこれら大企業・名門企業や地方自治体の一部は副業を解禁しました。「正社員や公務員であっても、今後は十分な給料が出せないかもしれない。副業を持つなどして自分で補ってほしい。あるいはリストラだって十分にありえる」といった考え方が背景にあるようです。
おそらくは、掛け持ちは今以上に一般的な働き方になっていくでしょう。薬剤師の免許を持っている人ならば、「会社員だけど、休日は病院薬剤師」「昼は公務員で、夜は短時間だけドラッグストアで勤務」といった働き方もありえます。もちろん、収入のアップと、リスクの分散になります。
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