薬剤師の労務管理【第12回】 円満退職のために!薬剤師の「退職」「解雇」で気をつけたいこと

退職の申し出は「14日」で成立する
労働者の退職について、民法では、雇用主側が承諾するか否かにかかわらず「退職を申し出てから14日で成立する」となっています。
しかしながら、退職の2週間前に申し出てそれ以降は出社しないとなりますと、仕事の引き継ぎや人員の補充など職場は大変です。一緒に働いている同僚にも迷惑をかけることになってしまいます。
一般的には、雇用契約書や就業規則等で1カ月前や3カ月前に退職を申し出ること、と定めていることが多いでしょう。ですから、退職を考える場合にはいつまでに退職を申し出なければならないのかを確認してください。
「引き継ぎ」をしっかりと
薬剤師の転職では、退職の意向を伝えてもなかなか後任が見つからず「次の人が見つかるまではいてくれ」のような引き止めの交渉があるかもしれません。
「退職日が決まらず、次の転職先に約束していた入社日に入れない」などのトラブルは避けたいものです。しかし、14日で成立するのだから・・・と強引に退職してしまうのではなく、極力、十分に諸事情を配慮した上で、退職日を相談することをお勧めします。
しっかりと業務の引継ぎをすることで、同僚から快く送り出してもらえますし、次の職場でも現在の同僚と繋がることがあるかもしれません。また、最近では「一度辞めた職場へまた戻る」という方が増えています。せっかくのご縁ですから、今の職場との関係を良好に保っておくことはとても大切です。
残っている「有給休暇」はどうなるの?
退職時の困りごととして、「有給休暇、残りはどうなるのですか?」というご相談が多くあります。基本的に、会社や薬局、病院には、有給休暇を消化させる義務がありますので、申請することで取得できるはずです。
しかし、例えば「1カ月前に退職申し出て、20日間の有給休暇を取りたい」では、残りの期間がほぼ休みとなり、職場全体が困ってしまいます。残りの有給休暇を全部使いたいのであれば、なおさら早めに退職を申し出るようにしましょう。
「有給休暇の買い取り」について、在職中に買い取ることは禁止されていますが、退職時に関しては、限定的に買い取ることが認められています。ただし、有給を買い取るかどうかを決めるのは会社や薬局、病院です。「退職日がなかなか決まらない」「後任が決まるまでは来てほしい」などと言われて有給休暇を消化できそうにないときは、交渉してみてください。
「解雇通知」を受けた場合は?
「解雇」とは、労働者は辞めるつもりがないのに、会社や薬局、病院から一方的に辞めさせられることを言います。労働基準法上、簡単に認められるものではありません。解雇理由としては、例えば職務能力が著しく欠けている、協調性が著しく欠けている、あるいは事業を継続することが相当困難である、などに限ります。
また、解雇予告と言って、会社や薬局、病院は、30日以上前に解雇する旨を解雇する従業員に伝えなくてはなりません。もし、30日前までに予告ができない場合には、その代わりとして、その予告日数を短縮した分の「解雇予告手当」を受けられます。
極端な例ですが、「もう明日から来なくていいよ。」と言われたら、30日分の予告手当が受け取れます。
何の落ち度も無く解雇されることはありませんが、もし、不当な解雇通知を受けたり、即日解雇で解雇予告手当が出なかったりする場合には、労働基準監督署や法律の弁護士、専門家に相談することをお勧めします。
女性は知っておきたい「産前産後休業」
解雇には、法的に完全に解雇自体が禁止されている期間があります。それは、産前産後休業中と復帰後の30日間、業務上の療養期間、労災で休職している場合です。
働いている中で、解雇を受けることはなかなか無いことです。薬局の場合、例えばクリニックの先生が高齢でクリニックを閉じることとなり、その薬局も閉じるので解雇となる、のようなことがあるかもしれません。もしそういった場面に遭遇した場合は、このような解雇予告の問題などを思い出してください。
今回のポイント
・「退職は申し出てから14日で成立する」と民法で定められている
・業務の引き継ぎや人員補充、後任探しなどの事情を踏まえて、退職日について雇用主とよく相談すること
・有給休暇を考慮して退職日を決める、買い取るか否かなどは会社と相談する
・職務能力が著しく欠けている、事業を継続することが困難などの理由で「解雇予告」を受ける場合がある。この場合は30日前に通告しなければならない
・産前産後休業と復帰後の30日間(女性)、業務上の療養期間、労災で休職している場合は解雇自体が禁止されている
長友秀樹(ながとも ひでき)
一般企業に就職後、MR、社会保険労務士(社労士)資格を取得。人事コンサルタントとしても活動経験を持つ。MR・人事コンサルタントとしての知見を生かして、自身の事務所を独立開業。医療業界に係わる人事・労務の諸問題の解決を中心に扱っている。