薬剤師の労務管理【第11回】 薬剤師の残業代はいくら?時間外労働・深夜労働・休日出勤の割増賃金について徹底解説!

割増賃金とは
「割増賃金」とは、時間外労働(残業)や休日労働、深夜労働に対して支払われる賃金のことを言います。通常の賃金に、それぞれ一定の割増率が加算されたお給料が支払われます。
時間外労働の割増率
「時間外労働」とは、労働時間の上限は1週間40時間、1日8時間と定められていますが、これを超える労働のことを言います。通常1.25倍の割増賃金が支払われます。
例えば、「1日7時間労働」の契約をしている場合、8時間まではそのちょうどの分が支払われ、8時間を超えて働いた際には1.25倍の割増賃金が支払われることになります。
休日出勤の割増率
休日出勤には種類が2つあります。少し難しいのですが、「法定休日」の出勤か、「法定外休日」の出勤かどうかで割増率が異なります。「週1日の休日(法定休日)」に出勤した場合には、通常1.35倍の割増賃金が支払われます。
例えば、「月~土曜日まで働いた上に、日曜日も出勤しました。」のように、1週間に1日の休日も確保されなかった場合には、法定休日の出勤として、1.35倍の割増賃金が支払われることになります。
一方で、「月~土曜日まで働いて、日曜日は休みました。」のように、1週間に1日の休日が確保された場合には、その会社や薬局の休日出勤だったとしても休日出勤手当(1.35倍)にはなりません。法定外休日の出勤です。週40時間を越えた分は、時間外労働手当(1.25倍)として計算されます。
深夜労働の割増率
深夜労働とは、午後10時から午前5時までの時間に労働することを言います。通常1.25倍の割増賃金が支払われます。
例えば、午後7時までの8時間勤務で契約している場合、午後7時から10時までは時間外労働として1.25倍、午後10時から午前5時までは深夜労働として0.25倍が加算され、1.5倍の割増賃金が支払われることになります。
8時間を超える勤務にならないシフトであっても、午後10時から午前5時までの時間帯に勤務する場合には1.25倍の割増賃金が支払われます。
一般的には病院の場合、夜勤をすると夜勤手当がもらえます。薬剤師のお給料には、夜勤、深夜割増が含まれていることが多いので、就業規則で詳細を確認しておくことをお勧めします。
表面化しづらい「長時間労働」問題
時間外労働(残業)は、長時間労働という観点から社会問題化しています。
例えば、ドラッグストアでは、営業時間が長いために拘束時間が延びてしまう・・・。調剤薬局では、人手が足りなくて、薬歴の記載などが日中に済ませられない・・・。患者さんの自宅に訪問して介護に関わって業務を行う薬剤師が増えていますが、日中片付けられないことを夜にまわしてしまう・・・。
特に病院では、患者さんが最優先ということで、働く人たちの健康面が犠牲にされがちです。しかしながら、これからは働き方改革として「働く人も健康でなければいけない」ということで、病院で勤務の方にも残業規制が求められていくことでしょう。
「なかなか残業が減らない」という声をよく聞きますが、全く減らす余地が無いということは無いはずです。まずは会社組織、働く人、双方の意識改革をしていかなければなりません。そうして、だらだら残業、付き合い残業、そして過重労働という問題に対し、双方が一体となって業務の効率化を進めて、残業を減らしていくことが大切です。
就職する前に避けられるリスクは避けておく
「残業代は別途支払われるのか、固定残業代として給与に含まれるのか」については、入社前に必ず確認しておくべき情報です。募集要項をしっかりと確認してください。曖昧にしたままで入社し、残業代は別に出ると思っていたのに実は含まれていた・・・そういった入社後のトラブルが後をたちません。会社を選ぶ際には十分にお気を付けください。
今回のポイント
・「割増賃金」とは、時間外労働や休日労働、深夜労働に対して支払われる賃金のこと
・「時間外労働」とは、法定労働時間の上限を超える労働のこと。割増賃金は1.25倍
・「休日労働」としての割増賃金1.35倍は、1週間に1日の休日も確保されなかった場合に支払われる
・「深夜労働」としての割増賃金1.25倍は、午後10時から午前5時まで働いた場合に支払われる。1日8時間を越えた場合は、時間外労働の割増賃金と合わせて1.5倍
・長時間労働の改善には、社内の労働意識を変えて業務を効率化し残業を減らすこと
長友秀樹(ながとも ひでき)
一般企業に就職後、MR、社会保険労務士(社労士)資格を取得。人事コンサルタントとしても活動経験を持つ。MR・人事コンサルタントとしての知見を生かして、自身の事務所を独立開業。医療業界に係わる人事・労務の諸問題の解決を中心に扱っている。