薬剤師の労務管理【第7回】年次有給休暇について

薬剤師にとって、労務管理で認められる権利を知ることは自分を守ることに繋がります。本シリーズでは、薬剤師が知っておくべき労務管理のあれこれについて、社会保険労務士の長友先生から講義形式でお伝えいたします。 今回は、「年次有給休暇」についてのお話です。
年次有給休暇(有給休暇)の取得はどのように行う?
年次有給休暇(有給休暇)は基本的に、労働者が申請した日に利用することができます。許可制、あるいは承認制としている会社や薬局・病院がありますが、法律上、許可がないと取得できないという制度ではありません。
ただし、繁忙期など労働者に休まれると困る日に関して、会社や薬局・病院は、有給休暇の取得をずらすよう労働者に求めることができます。これを「時季変更権」と言います。
例えば、花粉症やインフルエンザの流行時期で患者さんが増えて忙しい、少人数の職場で有給休暇の申請日が重なってしまった場合など、自分の希望した日に取れない可能性が高くなります。事前によく話し合って、有給休暇を取る日を決める必要があるでしょう。
有給休暇の申請は事前申請?事後申請?例外は?
有給休暇は、「事前に申請すること」が原則です。
よく問題になるのが、風邪をひいた時です。「体調がすぐれず、当日の朝に有給休暇を申請した。」これが認められるかどうか・・・特に取り決めが無い場合は、「当日の朝、始業時間まで」であれば認められるでしょう。
風邪で有給休暇が認められるかどうかについては、会社や薬局・病院によって様々です。
例えば、病気であっても「前日までに申請」と決められていて有給休暇が使えない、病気の場合に限っては事後申請でも有給休暇に振り替えられるなど、随分と違います。一度、就業規則を確認しておいた方が良いでしょう。

有給休暇の「付与日数」、付与要件となる「出勤率」と「有効期間」
有給休暇は、図の表のとおり、勤続年数によって与えられる日数が決められています。
正社員の有給休暇は、入社後6ヶ月時点で「出勤率8割以上」という条件のもと、10日間付与され、その後は1年ごとに11日から最大20日間まで付与されます。もし、長期にわたって休んで8割の基準を下回った場合には、有給休暇がもらえないということがあるかもしれません。
有給休暇の有効期間は、「2年間」です。与えられた初年度に取れなかった場合は、取り切れなかった日数は消滅するのではなく翌年まで繰り越しが可能です。
例えば、最初の1年で5日間しか取れなかった場合、残りの5日間が翌年度まで残ります。翌年度にはまた次の11日間が付与されるので、2年目は、5日プラス11日で「16日間」となります。
パートのように勤務時間が短い方の有給休暇の日数が、図の下の表です。
基準は、「週の労働日数と労働時間」です。週4日以下の勤務かつ週30時間未満の方を対象としています。パート契約であっても、「週5日勤務している」「週4日以下でも1週間の勤務時間が30時間以上ある」という場合は、正社員の区分で適用されます。
今回のポイント
・繁忙期などの有給休暇の申請に、会社や薬局・病院は「時季変更権」を行使できる
・有給休暇の取得は、事前申請が基本。病欠などの場合には、事後申請でも認められる可能性があるので、就業規則の確認が必要
・有給休暇は、入社後6ヶ月時点で出勤率8割以上あれば付与され、有効期間は2年間である
・週5日勤務、1週間30時間以上勤務のパートの有給休暇は、正社員の区分が適用される
長友秀樹(ながとも ひでき)
一般企業に就職後、MR、社会保険労務士(社労士)資格を取得。人事コンサルタントとしても活動経験を持つ。MR・人事コンサルタントとしての知見を生かして、自身の事務所を独立開業。医療業界に係わる人事・労務の諸問題の解決を中心に扱っている。