薬剤師の労務管理【第5回】就業規則について

薬剤師にとって、労務管理で認められる権利を知ることは自分を守ることに繋がります。本シリーズでは、薬剤師が知っておくべき労務管理のあれこれについて、社会保険労務士の長友先生から講義形式でお伝えいたします。今回は「就業規則」についてのお話です。
就業規則は従業員であればいつでも閲覧可能である
自分の会社、薬局の「就業規則」をご覧になったことはあるでしょうか。勤務時間や休日、休暇、賃金など、働く上で重要な労働条件を会社が定めるものです。
同じ薬局であっても、その規模や環境、経営状態などに応じて、定めるべき規則は異なります。したがって、就業規則は会社や薬局が個々に作る必要があるのです。
就業規則は、10人以上の従業員が勤める会社には作成義務が発生し、作成したものは労働基準監督署に提出しなければならないとされています。いつでも閲覧できるよう個々に配布されていたり、控え室に1冊備えられていたりなど周知の方法は会社によって様々です。
同意なしの就業規則の変更は認められない?
一旦定められた就業規則は、会社が一方的な判断で変更することはできません。
例えば、住宅手当の支給について、「一律2万円支給します」と定められているとします。これを勝手に変更し、不支給とすることは「労働条件の不利益変更」に値します。変更するには、実際に住宅手当の支給を受けている労働者の同意が必要です。
しかし、変更内容が合理的である場合、必ずしも全員が同意する必要はありません。例えば、業界の相場や会社の経営状況によってどうしてもやむを得ない場合があげられます。もし不利益変更の提示を受けたら、きっちりと会社と話し合う必要があるかと思います。
就業規則の変更で疑問があれば会社に聞く
就業規則の作成や変更をする際には、必ず従業員の過半数の代表者の意見を聞かなければなりません。
労働条件の変更が従業員に不利益とならない場合、例えば「法律改正により新しい条文を載せなければいけない」「クリニックの都合に合わせて勤務時間を変更しなければならない」などであれば、会社は従業員の代表者の意見を聞けば良いとされています。
通常は、社員説明会を開いて、就業規則の変更内容を十分に説明してから変更するという流れになります。ぜひそういった説明会に参加して、分からない所があれば会社に尋ねましょう。
就業規則をまだご覧になったことがない方は、一度確認していただいくことをお勧めします。
今回のポイント
・就業規則は従業員であればいつでも閲覧可能である
・10人以上の従業員が勤める会社には就業規則の作成と届出が義務付けられている
・就業規則の作成や変更には基本的に労働者の同意が必要である
参考リンク
長友秀樹(ながとも ひでき)
一般企業に就職後、MR、社会保険労務士(社労士)資格を取得。人事コンサルタントとしても活動経験を持つ。MR・人事コンサルタントとしての知見を生かして、自身の事務所を独立開業。医療業界に係わる人事・労務の諸問題の解決を中心に扱っている。