薬剤師の労務管理【第4回】社会保険について

薬剤師にとって、労務管理で認められる権利を知ることは自分を守ることに繋がります。本シリーズでは、薬剤師が知っておくべき労務管理のあれこれについて、社会保険労務士の長友先生から講義形式でお伝えいたします。今回は、「社会保険」についてのお話です。
正社員が入社時に加入する4つの社会保険
社会保険には、基本的に「労災保険」「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」の4つがあります。正社員は、これら全てに加入することになります。
一方で、健康保険、厚生年金保険が任意加入の会社があります。例えば、従業員が4人以下の個人薬局です。この場合は、ご自身で市町村の「国民健康保険」や「国民年金保険」に加入する必要性があるかもしれません。また、都道府県によっては、「薬剤師国民健康保険組合(通称:薬剤師国保)」という選択肢が存在します。
手続きに必要な書類は揃えて提出する
社会保険に加入するためには、「雇用保険の番号」「基礎年金の番号」「マイナンバー」など、書類の提出義務が生じます。これら書類を提出しなければ、保険証の発行などの手続きが遅れてしまいますので、期日までに提出しましょう。
パート社員が社会保険に加入するための条件とは?
パート社員は、労災保険を除いて、新しく入る会社の労働条件によって加入、非加入が決まります。「労災保険」は、短時間のアルバイトであったとしても全員が加入できます。
・「雇用保険」は、「1週間の労働時間が20時間以上である」という条件で加入できます。-[1]
・「健康保険」「厚生年金保険」は、「1週間の勤務時間が正社員の勤務時間の4分の3以上」という条件で加入できます。-[2]
例えば、「正社員の勤務時間が1週間で40時間の会社」に入社するとします。
その4分の3にあたる30時間以上の勤務時間であれば、「健康保険」「厚生年金保険」加入の条件を満たします。この場合、1週間の労働時間が20時間以上という「雇用保険」の条件も満たしており、正社員同様すべての社会保険に加入できます。
社会保険の加入、非加入については、応募要項に記載されています。どんな保険に加入するのか、健康保険なのか薬剤師国保なのかなど、会社に確認を取った上で入社を決めることをお勧めします。
今回のポイント
・正社員は、基本的に労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険に加入する。
・小規模の薬局は、健康保険、厚生年金保険が任意加入となる可能性がある。
・パート社員の社会保険は、労災保険以外、労働条件により加入の可否が決定する。
・都道府県によっては、薬剤師国民健康保険組合(薬剤師国保)を選択できる。
参考リンク
[2] 厚生労働省 平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がっています!(社会保険の適用拡大)
長友秀樹(ながとも ひでき)
一般企業に就職後、MR、社会保険労務士(社労士)資格を取得。人事コンサルタントとしても活動経験を持つ。MR・人事コンサルタントとしての知見を生かして、自身の事務所を独立開業。医療業界に係わる人事・労務の諸問題の解決を中心に扱っている。