薬剤師の労務管理【第2回】採用について

薬剤師にとって、日頃の業務と労務管理は切り離すことができません。本シリーズでは、薬剤師が知っておくべき労務管理のあれこれについて、社会保険労務士の長友先生から講義形式でお伝えいたします。第2回となる今回は、採用に関する話です。
会社と労働者、両者の採用に関する「自由」
新しい職場を探される方にとって、大きな関門となるのが≪採用≫です。 採用に関しては、会社と労働者、それぞれに自由が認められています。会社は、応募者の中から自社の要件に合う方を選ぶ「採用の自由」が認められています。一方で、薬剤師の皆さまには、好きな会社を選ぶ「職業選択の自由」が保障されています 。
採用について、会社が注意するべきこと
会社が求人募集を出すにあたり、どんな条件で出しても良いかというとそうではありません。法律による一定の制限が存在します。例えば、「20代の男性薬剤師が欲しい」としても、年齢や性別を制限した募集は、原則として禁止されています。給料は、最低賃金を下回る条件を出すことはできません。
より良い労働条件や魅力的な職場環境を提示している会社、薬局であれば、応募者は多くなり、会社としては選択の自由が増えるでしょう。逆に条件が厳しければ、応募者は少なくなり、選択の自由が狭まるかもしれません。いわば需要と供給によって、基本的には自由に選ぶことができます。
採用について、労働者が注意するべきこと
薬剤師の皆さまは、応募を通過した後の面接で、履歴書や職務経歴書、薬剤師免許の提示を求められることがあります。会社は、提出された書類に基づいて選択するので、もしそれらに虚偽情報が含まれているとトラブルの要因となる可能性があります。ですから、いくら入りたいと思っても、虚偽や誇大な書き方には気を付けましょう。
少ない事例ではありますが、「大量に採用内定が取り消された」というニュースが耳に入ってくることがあります。採用内定は、いくら入社前であってもやむを得ない事情が無い限りは簡単に取り消すことはできません。万が一、会社から一方的な内定取り消しの通告を受けた場合は、然るべきところにご相談ください。
今回のポイント
・会社には「採用の自由」、薬剤師には「職業選択の自由」が認められている
・年齢や性別制限、給与についてなど、求人募集には法律による一定の制限がある
・応募する際、書類には虚偽や誇大な記載を避ける。万が一、会社から一方的な内定取り消しを受けた場合は然るべきところに相談をする
長友秀樹(ながとも ひでき)
一般企業に就職後、MR、社会保険労務士(社労士)資格を取得。人事コンサルタントとしても活動経験を持つ。MR・人事コンサルタントとしての知見を生かして、自身の事務所を独立開業。医療業界に係わる人事・労務の諸問題の解決を中心に扱っている。