薬剤師に役立つスキル『コーチング(承認編)』~相手の自己重要感を高める~

今回は、相手の存在、努力の過程・結果を認め、ありのままに伝える「承認」について学習します。
相手を認める「承認」とは
「承認」とは、相手の変化や成長、存在そのものを無条件にありのままに認めて伝えることです。声をかける、挨拶をする、贈り物をする、褒める、相談する、ねぎらうなど、相手の存在にかかわり合う行為はすべて「承認」です。“心の栄養”“心のビタミン”とも言われ、その人の自己重要感を高めます。
人は誰もが、上位に“他者に認められたい”という「承認」の欲求を持っています。“他者に認められたい”という欲求が満たされて、初めて自己実現を目指すようになるのです。そういう点でも、「承認」はよりよく生きようとする人にとって極めて重要です。
「行為承認」と「存在承認」とは
コーチングのスキル「承認」、「行為承認」(「結果承認」「過程承認」)と「存在承認」について説明します。
まずは、「結果承認」について説明します。生み出した結果を他者が承認することで、相手は達成感を満喫することができます。例えば、こんなやり取りです。
■結果承認の例
先輩役:「鈴木さんの頑張りのおかげで、この店の服薬指導加算の算定率は、大幅アップしているよね!」
新人役:「ありがとうございます。もっと患者さんに関わっていけるよう、工夫していきたいと思っています!」
先輩役:「おおいに期待しているよ!!」
つぎに、「過程承認」について説明します。それまでの過程を他者が承認することで、相手は救われた気持ちになれます。例えば、こんなやり取りです。
■過程承認の例
先輩役:「ここのところの鈴木さんの服薬指導に対する頑張りは、目を見張るものがあるね!」
新人役:「ありがとうございます。でも、なかなか算定率とは結びつかなくて…」
先輩役:「算定率はこれから伸びていくよ。鈴木さんの頑張りで、患者さんの満足度は間違いなくアップしていると思うから」
最後に、何よりも大切な「存在承認」について説明します。
薬剤師は、「患者さんの唯一性を認めて尊敬する」という姿勢を心得ておかなければなりません。そうすることで、在宅や終末期医療の現場であっても、患者さんは「私はここにいてもよいのだ」という安心感を抱くことができます。例えば、こんなやり取りです。
■存在承認の例
利用者:「いつもすまんなぁ。ワシなんか人に世話をかけてばっかりで、何の役にもたたん」
薬剤師:「そんなことありませんよ。○○さんに飲んで頂きたくて、私はお薬を準備しています。○○さんにお会いして元気をいただいているんですよ」
利用者:「…ありがとう」
いかがでしたか?承認のスキルについてお話しました。相手を承認するときは、事実をできるだけ具体的に表現して伝えていきましょう。
今回のまとめのポイント
・「承認」は相手の自己重要感を高める効果がある
・「行為承認」と「存在承認」を理解することで、相手のことをありのままに承認することができる
・相手を承認するときは事実をできるだけ具体的に表現して伝える
ウィズサポ代表
川村 和美(かわむら かずみ):名城大学薬学部薬学科、同大薬学研究科博士号取得。薬局勤務を経て2009年に経営倫理士資格を取得。薬剤師の「倫理」の観点から薬剤師教育に尽力。日本薬学会、日本医療薬学会の代議員としても活動。執筆歴としては『薬剤師とくすりと倫理』執筆『そこが知りたい,緩和ケアにおける服薬指導』の『緩和ケア』編執筆など多数。