【第十四回】組織の意思決定をきちんと伝える -薬剤師が知っておくべきクレームへの対応 – 薬プレッソ

薬剤師の法律のイロハ|赤羽根弁護士

【第十四回】組織の意思決定をきちんと伝える -薬剤師が知っておくべきクレームへの対応

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薬剤師にとって、日頃の業務と法律は深く関わっています。本シリーズでは、薬剤師が知っておくべき法律のイロハについて、赤羽根弁護士から講義形式でお伝えいたします。動画は5分程度ですが、講義内容を文章で閲覧されたい方は、こちらの記事で内容をご確認ください。

対応は複数名で、窓口は一人にする

今回は、クレーム対応は誰がするのかというお話をしたいと思います。保険会社の方は、基本的には窓口になってくれませんし、いきなり専門家に頼むこともできない場面もあるかと思います。そうすると、社内の方や薬局の中で誰かが対応をしていくことになります。ミスをした本人だと感情的になる部分もありますので、ある程度の責任を持って対応できる方を窓口にするのが望ましいと思います。

実際は、“患者さんとの対応は複数のほうが望ましい”と言われます。例えば、患者さんのご家族が薬局に来て、「どうしてくれるんだ」ということを言われたり、または患者さんのご自宅に行かなければならない場合もあるかと思います。そういった時には、やはり一人では不安もありますし、数的にこちらがある程度多いほうがお互いの安心感もありますので、基本的には、複数のほうが望ましいのです。

ただし、そこで“担当者を決める”ということが大切です。複数で行ったからといって「誰に連絡してくれてもいいです」というのは、あまり望ましくありません。例えば担当者を2名にした場合、例えばAという担当者が患者さんとやり取りをした後、Bという担当者に情報を伝えるタイムラグがあったり、またBが今度対応をしたときに情報がうまく伝わっていないために、患者さんから信頼を失ってしまうこともあります。「話が違うじゃないか」「この前説明したのに」などと言われる可能性がある。ですから、実際会うときは複数のほうが良いですが、窓口となる担当者はできれば一人に決めておいたほうが、のちのち問題になりづらいと言えます。

実際に、過誤がありトラブルになったときに重要なことは、被害者の方と信頼関係を築くということです。被害者の方が怒っている場合でも、最終的に和解しましょう、示談にしましょうと話し合いでまとまる時というのは、やはり何らかの信頼関係というものが、その担当者と患者側の方でできている感じがします。こういった観点からも、やはり、窓口は一人にしたほうが信頼関係も作りやすいですし、最終的な合意に至る可能性も高いと思います。

やりとりは記録として残すこと

最後にもう1つ大切なことは “やり取りは客観的な記録として残しておく”ということです。過誤の前の記録もとても重要ですが、過誤の後のやり取りで、言った言わないなんていうこともあり得ますし、そういったことで問題が起こり得ることもあります。やはり、記録としてやり取りの内容をきちんと残しておく必要があります。万が一、そのあと紛争になるような時にも、そのやり取りが非常に重要な意味を持ってくるということもあるからです。

また、そのミスをした人が会社に報告するのは当然ですが、会社など組織で対応をしているのであれば、“組織の意思決定をきちんと伝えておく”ことが大切です。それをきちんと伝えておかずに実はあとで違った、などということになると、それも問題や紛争が悪化する原因になりますので、そういう意識も持っておくことが必要です。

ここまでクレーム対応のポイントをお話ししてきました。あとは、患者さんを見ながら、ケースバイケースで対応していくしかないと思いますが、これまでの内容を必要最低限の知識として、理解していただければと思います。

今回のポイントまとめ

・患者さんとの対応は複数名が望ましいが、窓口は一人に決めておく
・言った言わないを避けるためにも、記録としてやりとりの内容を残しておく

赤羽根 秀宜(あかばね ひでのり)
中外合同法律事務所パートナー, 薬事・健康関連グループ代表
弁護士・薬剤師
薬剤師の勤務経験がある弁護士として、薬事・健康・個人情報保護等にかかる問題を多く取り扱う。主な著書に「医薬品・医療機器・健康食品等に関する法律と実務」(日本加除出版株式会社)、「赤羽根先生に聞いてみよう 薬局・薬剤師のためのトラブル相談Q&A47」(株式会社じほう)等がある。
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薬プレッソ編集部

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