【第十一回】クレームの初期対応 -薬剤師が知っておくべきクレームへの対応 – 薬プレッソ

薬剤師の法律のイロハ|赤羽根弁護士

【第十一回】クレームの初期対応 -薬剤師が知っておくべきクレームへの対応

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薬剤師にとって、日頃の業務と法律は深く関わっています。本シリーズでは、薬剤師が知っておくべき法律のイロハについて、赤羽根弁護士から講義形式でお伝えいたします。動画は5分程度ですが、講義内容を文章で閲覧されたい方は、こちらの記事で内容をご確認ください。

曖昧なままで答えないようにする

前回、クレームの対応としてまずは損害を減らす、被害の回復に努めるということが大切だというお話をしましたが、では次に考えなければいけないのは、やはりいわゆる過失というものがあったのかどうかという点です。患者さんは「ミスがあった」と言っているけれども、本当に自分の所のミスなのかどうかを考えなければなりません。

それを前提にして患者さんにきちんとした対応をしておかなければいけないのです。よく誠意のある対応と言いますが、患者さんが求めている内容について、しっかりと説明したり対応をしていかないと、初期対応が悪いということで、問題になり得ることもあるからです。この対応の中で、非常に重要なのは、“曖昧なままで答えるのは避けなければいけない”ということです。トラブルになったときのやり取りで、とても重要なことは、“言ったことは取り消せない”ということ。この意識を持っておくのは、とても重要になってきます。

例えば、患者さんが言う通りに自分のミスだという前提で話をしていたけれども、いろいろ検討してみると、実は自分の所のミスとは言えないというふうに考えたとき。「やはりそれはうちのミスではなかった」と言ってご理解いただくのは、とても労力が要りますし、これからやり取りをしていく中で、信頼というものも無くなってしまいます。患者さんに対応して説明するときに、きちんと事実を確認をした上で間違いないということを答えていかないと、後から違ったということになるとその後の交渉の進め方にも大きな影響を与えます。患者さんが怒っているなどで、すぐに対応しなければいけない場合であっても、曖昧なまま答えるぐらいであれば、一旦待ってもらって「いつまでに調べて回答します」と、期限を定めて約束をしてその上で答える方が、曖昧なことを言ってしまうよりはずっといい結果になることが多いのです。

患者さんによって対応は異なる

次に重要なことは、患者さん側の感情を和らげる必要性があるということです。最終的に大きなトラブルや紛争になるかというのは、被害の大きさなどにもよりますがやはり患者さんの感情というのが大きく影響してくると言えます。そういう意味では、患者さんによく理解をいただいて、ミスがあったとしても納得してもらえるような対応をしていかなければいけません。何をもって誠意かというのは、患者さんによっても違いますし、何を求めているかによっても違うということになるかもしれません。

結局、対応はケースバイケースというふうに言わざるを得ないのかなと思います。患者さんの状況を見て、必要なものを提供していくということになりますし、もちろん、約束は守るとか、期限は守るとか、また何人かで対応するのであればその連携をしっかり取っておくといった最低限の意識は必要になってくると思います。

今回のポイントまとめ

・言ったことは取り消せないので、曖昧なままでの回答は避ける
・対応は患者さんの状況は必要なものを提供していくのでケースバイケースであるが、約束や期限を守るなど最低限の意識は必要

赤羽根 秀宜(あかばね ひでのり)
中外合同法律事務所パートナー, 薬事・健康関連グループ代表
弁護士・薬剤師
薬剤師の勤務経験がある弁護士として、薬事・健康・個人情報保護等にかかる問題を多く取り扱う。主な著書に「医薬品・医療機器・健康食品等に関する法律と実務」(日本加除出版株式会社)、「赤羽根先生に聞いてみよう 薬局・薬剤師のためのトラブル相談Q&A47」(株式会社じほう)等がある。

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