【第十回】被害の回復や拡大防止を第一に考える - 薬剤師が知っておくべきクレームへの対応 – 薬プレッソ

薬剤師の法律のイロハ|赤羽根弁護士

【第十回】被害の回復や拡大防止を第一に考える - 薬剤師が知っておくべきクレームへの対応

LINE
薬剤師にとって、日頃の業務と法律は深く関わっています。本シリーズでは、薬剤師が知っておくべき法律のイロハについて、赤羽根弁護士から講義形式でお伝えいたします。動画は5分程度ですが、講義内容を文章で閲覧されたい方は、こちらの記事で内容をご確認ください。今回からは、調剤に関わるクレームへの対応についてお話しします。

基本的な対応方法

薬剤師の業務の中で、調剤に関わるさまざまなクレームへの対応ということがあると思います。例えば、「お前の所の薬が間違っていた。それで母の調子が悪くなったんだ」といったケース。「どうしてくれるんだ」というクレームをいきなり言われた場合、どのような対応をすれば良いのか、法的に押さえておくべき基礎的なところからお話ししていきます。

“被害の回復”を第一に考える

まず、ミスがあったかどうかも含めていろいろなトラブルがあると思いますが、トラブルの対応として「調剤行為に起因する問題・事態が発生した際の対応マニュアル」というものが平成26年1月に、日本薬剤師会から出されています。事前にこのマニュアルを少し読んでおくと、何か問題があったときには、対応しやすくなりますので、基本はこれを参考にしていただければと思います。

では、それを前提にして、少し具体的なところをお話ししていきましょう。まず、そういう人が来たり、または電話がかかってきた場合に、最初に何をするのか。患者さんやそのご家族の方の対応をしなければいけないのはもちろんですが、まず一番にしなければならないことは“状況を確認し、被害の回復や拡大防止を第一に考える”ということなんですね。前述の場合、「母の調子が悪くなった」と言っているわけですから、それがどの程度悪いのか、どういう状況なのかというのを確認する。その時にすぐ病院に行って診てもらったほうがいい場合もあります。ですから、まずは、自分の所のミスかどうかというのは置いておいてでも、被害がありそうであれば、“被害の回復”を第一に考えるということが重要になってきます。

これは法的に言うと “損害が減る可能性がある”ということです。病院に行くのが遅れて、入院が1カ月になってしまったのか、早期治療によって、入院が1週間で済んだのかで損害額が大きく変わってきます。損害というのは、そのためにかかってしまった費用のほかに、慰謝料などがあるわけですが、実際の被害が小さければ小さいほど、民事での金銭の支払い額を減らすことができるという効果もあります。もちろん、調子が悪いと言っている方がさらに悪くなってしまうのは一番の問題ですから、薬剤師の職務的な観点から言っても、まず、すぐに病院に行ってもらったり、被害の回復に努めることが重要なことは言うまでもありません。さらに法的な観点から見ると、損害を減らすことができるということで、その後万が一、本当に自分の所のミスだったということになると、その後の交渉ややり取りにも非常に影響を及ぼすことになるので、そういう意識で、まずは対応をしていただくことが重要になってきます。

今回のポイントまとめ

・トラブル対応の基本は「調剤行為に起因する問題・事態が発生した際の対応マニュアル」を読んでおくとよい
・被害がありそうであれば“被害の回復”を第一に考えるのが重要

赤羽根 秀宜(あかばね ひでのり)
中外合同法律事務所パートナー, 薬事・健康関連グループ代表
弁護士・薬剤師
薬剤師の勤務経験がある弁護士として、薬事・健康・個人情報保護等にかかる問題を多く取り扱う。主な著書に「医薬品・医療機器・健康食品等に関する法律と実務」(日本加除出版株式会社)、「赤羽根先生に聞いてみよう 薬局・薬剤師のためのトラブル相談Q&A47」(株式会社じほう)等がある。
LINE

この記事を書いた人

薬プレッソ編集部

薬プレッソ編集部

薬剤師のみなさんが仕事でもプライベートでも、もっと素敵な毎日を送れるような情報を日々発信しています。

「薬プレッソ」の「プレッソ」はコーヒーの「エスプレッソ」に由来します。エスプレッソの「あなただけに」と「抽出された」という意味を込め、薬剤師の方に厳選された特別な情報をお届けします。

「プレッソ」にはイタリア語で「すぐそばに」という意味もあります。編集部一同、薬剤師のみなさんと伴走しながら、みなさんの「もっといい人生、ちょっといい毎日」のために「ちょっといいメディア」にしていきたいと思っています。

あなたにおすすめの記事

転職事例