「くすり」を学べる施設シリーズ第2回 累計来場者数3,000万人!「クスリウム」は”本気”の大人がいっぱい!

薬剤師ってどんな仕事をしてるの?そんな質問をされたことはありませんか?そもそも「薬」に対する理解は、専門的に学んだ人とそうでない人でおそらく大きく異なるものでしょう。
このシリーズでは、家族や友人、大切な人、誰でも楽しく薬について学べる施設を紹介していきます。
「薬ってすごいんだぞ!」を、自分の身近な人に知ってもらえる機会として、また自分自身もあらためて学べるような施設をまとめました。

第2回となる今回、薬プレッソ編集部は科学技術館3階の常設展示室「くすりの部屋―クスリウム」を訪ねました。くすりを学べる施設も2回目なので、正直、“「薬の展示」というコンセプトでどこまで差別化が図れるのかな…?”なんて、思っていましたが、甘かった!とにかくお話が面白い学芸員さんと、展示室を制作・提供した日本製薬工業協会(以下:製薬協)のご担当者様にお話を伺うことが出来ました!

立地はなんと北の丸公園内!科学技術館内「クスリウム」に行ってみた

東京都千代田区、竹橋駅から徒歩7~8分ほどに立地する「科学技術館」。
周囲には、皇居や国会議事堂、最高裁判所など国内でも特に重要な建物がずらり。
北の丸公園内という都内でも絶好の立地にあるこの施設には、1964年の開館以来、なんと累計3000万人以上の人が訪れており、現在も年間約55万人が来館しています。
一体なぜ、この場所に「くすりの部屋―クスリウム」が誕生したのでしょうか。
今回は学芸員の松浦さんと製薬協の箕部さん・藤本さんの双方にお話を伺いながら、クスリウムの魅力に迫っていきたいと思います。

そもそも 「科学技術館」ってどんなところ?

科学技術館は東京オリンピック開催年と同年にあたる1964年(昭和39年)に開館しました。立地や規模から見て、国立の施設———かと思いきやそうではありません。民間の財団が運営し、50年以上続いています。他の博物館との大きな違いは「産業界の多種多様な団体や企業から支援を受けている」ということ。
施設の入り口には支援を行う多くの団体や企業が名を連ねています。

産業界からの支援を受けていることも影響して、この科学技術館では「産業」を切り口に様々な展示物を見たり、体験したりすることが出来ます。

『産業を切り口にした展示って何?』と思われる方もいらっしゃると思いますが、実はここが科学技術館の大きな魅力の一つ!
たとえば、一般的な理科の博物館であれば、物理・化学・生物・地学…など、いわゆる学校の理科で習うような諸分野に分かれて展示されていることが多いですよね。ところが、この科学技術館では、製薬、自動車、建設、鉄鋼…など、切り口を“産業”にしたテーマで、科学や技術を紹介した展示が中心になっています。全館で約20の展示室が用意され、そのうちの1つが今回訪れた「くすりの部屋———クスリウム」です。

産業界を牽引する企業から支援されていることもあり、館内は斬新な展示ばかり!
クスリウムの隣にあった「ブルガリア博士のヨーグルト研究室(出展企業:株式会社明治)」なんて展示も気になって仕方がなかったのですが、今回はクスリウムの特集です!(薬プレッソ編集部が体験できなかったその他の展示は、ぜひ皆さんご自身で体験してみてください!)

年間約55万人が来館する「体験型」の博物館

では、早速クスリウムへ!

館内は様々なブースによって分かれており、ゲームや展示、体験型ワークショップも用意されています。校外学習の一環として学校単位で訪問される機会も多く、来館で一番多い年齢層は小学生の方なのだとか。本日は取材のためじっくり堪能させていただきました!

「博物館と聞くと、“しーっ!静かに!”…というイメージが比較的強いかと思うのですが、ここは『自分で体験してもらうこと』を意識して展示を行っています」

館内を案内してくださったのは学芸員の松浦さん。普段個別のご案内は行っていないとのことなのですが、今回は特別に個々のブースを案内していただきました!

「とにかく体験して、いろんなことを“自分で”やってみて『そうなんだ!』と発見や気付きを得てもらえることが理想です。」

そう松浦さんが力説するように、科学技術館では全館で毎日40回以上のプログラムが用意されています。初歩的な科学実験や、工作や映像を中心に構成されており、クスリウムでは1日3回、薬に関する実験教室に参加することが可能です!

なんと、子ども用に白衣を借りることも出来ます!


展示室内は「薬の研究室」というコンセプトで設計されており、部屋全体の展示物やモチーフは全て六角形のベンゼン環や薬剤のカプセルをイメージして作られています。細部までこだわりを感じる空間です。

「子どもの全力に、全力で返す」

それにしても驚くのが、クスリウム内に設置された展示物!イラストやゲームなどで分かり易くはされているものの、内容が専門的…!『来館者に多いと言われる小学生たちは、本当に理解しているのか…?』とざわつく編集部一同。

「実は、あえて内容は“子ども用”にしていないんです。“子どもだからここまで”という線引きをするのではなく、知りたい・学びたいと思った子どもたちがより深く学べる場所にしたいと考えています。」

たしかに、「もっと知りたい!」と思ったときの一番の壁は、「子どもはここまで」という線引きですよね。実際に、そうした子どもたちの「知りたい欲」に応える為に来訪するご家族も多いそうです。

「小学生とは思えないような知識を持ったお子さんが、意外といらっしゃるんです。本気の子どもたちの質問に、僕たちも本気で応えます。以前保護者の方に『子どもに質問されても答えられないことが多くて困っていた。ここに連れてきてよかった』と言っていただけた時は嬉しかったですね。」

子どもに質問されて答えに詰まった経験のある大人の皆様も多いのではないでしょうか…!そんな大人の我々にも有難い施設ですね!

展示室内には「チャレンジラリー」もあり、“せっかく来たけどどこから見ればいいかわからない!”という方にもおすすめです!

入口に用意されたラリーカードを、展示室内にある情報ボックスに持っていくと、クイズが出されます。全部のクイズを解いていき、最後に採点コーナーで自分のレベルを試せるとのこと。

クイズの回答結果で初級・中級・上級…といずれかの研究員認定を受けられます!
「このクイズ、実は結構難しいですよ」と、松浦さん。
今回編集部では時間が足りず挑戦できなかったのですが、ぜひ来館時はチャレンジしてみてください!

もちろんゲームも用意されています。
こちらは体内で薬が効果を発揮する流れを説明するためのゲーム。
同じ形の穴に、薬の成分(ブロック)を動かしていきます。


製薬協の藤本さんが実演してくださいました。
横で見ていると意外と簡単そう?
もちろん編集部もチャレンジ!

実際にやってみると、意外と難しい!!
時間が経つにつれてブロックが大量に落ちてくるので、だんだん間に合わなくなってきます(笑)
楽しみながら、気づくと薬の仕組みが学べている———という有難いゲームです。

文系も理系もない!科学技術館ならではの“学び”とは?

産業別で展示することで、独自の切り口を提示する科学技術館。
その中にある「クスリウム」も、様々な願いを込めて作られました。

「個人的な見解ですが、僕は学問を文系・理系で分けてしまうのは不自然だと思っています。」

と、松浦さん。

「たとえば、理系の要素だけを展示するなら、ここには“くすりの歴史”なんてブースは必ずしも必要ないですよね。」

確かに、単純に理系と括ってしまうと、化学式や構造、成分がメインになってきますね。

「でも、薬の起源———薬っていつからあるの?———という話は、知っていた方が絶対に面白いし、知識に奥行きが出ます。本草学や蘭学、富山の薬売り、東洋医学なんかも展示で説明しているんですが、これって一部は社会科の内容ですよね?一緒に学んだ方が絶対に面白いのに、もったいない!」

実は最初にお会いした際に、「松浦さんは文系ですか?理系ですか?」なんて野暮な質問を投げてしまっていたのですが、そんな自分が本当に恥ずかしい…!
科学技術館のクスリウムでは、文系も理系も関係ない「学び」を体験していただけます!

科学技術館の中に「クスリウム」を作った経緯とは?

では、この科学技術館に薬を学べる施設を作った経緯はどういったものなのでしょうか?
今回は特別に、製薬協広報部の箕部さん、藤本さんにもお話を聞くことが出来ました!

「私たちは、子どもたちに“科学って面白い!”と興味を持ってもらいたくて、PRや広報といった活動は常日頃から取り組んでいました。今回こうして展示施設を作ることも、そのPRの一環になるかなと思っています。」

そう話す箕部さんですが、実は今回のクスリウム設立は元々プランがあったわけではなかったそうです。偶然科学技術館や施設関係者とご縁があり、今回の取り組みにつながったのだとか。
「製薬産業を『科学』という広い意味で考えた時に、『科学』そのものに関心を持ってもらえるというのはすごく重要なんですよ。
子どもたちが科学から離れ気味にあるこのご時世、少しでもそういう子供たちが増えてほしいっていうのが、我々や、各製薬会社の願いでもあると思います。」

作る上で苦労したことは、「子ども目線」

それにしても、これだけのコンテンツを集めて設置して、内容も子ども向けに工夫し、情報に齟齬がないように…となると、非常に準備が大変だったのでは?
きっと様々な苦労があったに違いない!と睨んだ編集部は、せっかくの機会なので、「くすりの部屋―クスリウム」を設立するまでのお話もお伺いしました。

「正直、すごく大変でした(笑)。」

「お医者さんや科学技術館さんからもいろいろアドバイスをもらったんですけど、台の高さを子どもに合わせた高さにしたりとか、展示も工夫が必要だったりで。
パネル展示だけだと、子どもって飽きちゃうじゃないですか。何か触ったり、いじったり、光ったり、鳴ったり…そういったものの方が来てくださった皆さんも楽しいですよね。」

と子ども目線で作ることが最も難しかったと、藤本さん。

確かに大人になると普段の生活で、子ども目線ってなかなか考える機会が少ないですね。
出来上がるまで時間は、どのぐらいかかったのでしょうか。

「ほぼ1年ぐらい、かかっています」

はにかむように回答する箕部さん。
言葉1つとっても何か瑕疵があるといけないので、デザインも文章も1つ1つ全部チェックしているそうです。

絵のタッチも見ていて面白いですよね。

「イラストもこだわりました!製薬会社があまり採用しなさそうなテイストにしてみました。親しみやすいイラストにすることで、お子さんにも興味を持っていただける作りになっているのではと思っています。」

イラストもよく見るとたらこ唇だったり、突然お化けが出てきたり…ユニークなものが多いですよね。

「もちろん、親しみやすさだけではなく、“最先端”な雰囲気を出すことも重要なので、パネルの形や展示室内の設備には統一感を持たせて設計しています。」

展示物はイラストや言葉の細部まで、本っ当にこだわって作られたことがすごく伝わってきました!

新薬作りは「次の世代へバトンをつなぐこと」

「くすりのできるまで」という展示を見ていると、新薬作りの大変さが色々な視点から描かれているところが非常に印象的でした。
新薬を作る苦労って、普段あまり触れることがないので、途方もない数字を見ながらただただ圧倒される編集部一同。この展示物にもこだわりが見えます。


「そうですね、新薬作りの展示物はこだわった部分の一つですね。
展示の中で開発費用についてはあまり触れていませんでしたが、すっごく費用もかかるんですよ。もう、何千何百億円とかかかるものもあるわけです。未来の薬のためにそれだけお金をかけてるって、実はすごいことなんだよっていうのも、実はちょっとわかってほしいと思うところがあります。これは薬剤師の皆さんだけでなく、たくさんの人にわかってほしいです。」

と、藤本さん。ものすごい費用感に動揺する編集部。私たちが何気なく飲んでいる薬たちが、そんなにたくさんのお金をかけて作られたものだったなんて…!!年末ジャンボ何回当たればいいのか…!!

「実は新薬開発って、企業的には結構、博打みたいな側面があるんですよね。
新薬が生まれるまでに、9年~16年くらいかかるんです。それだけ長期の時間が必要になるということは、研究者や研究に携わってる人でも、就職してからずっと、自分の関わった新薬が世に1個も出ない———そんな人が、圧倒的に多い。」

新薬開発の話、重いです———。自分がどれだけ新薬開発に関わって、心血注いだとしても、自分の関わっているうちに世に出るかどうかはわからない———。そんな人たちは一体どんなモチベーションで仕事をしているんだろう、と、想像するだけで涙が出そうになってしまいました。

「でも、その人たちが研究を続けてくれたことって、無駄にならないんですよ!これはダメだった、ということがわかった。“このやり方はダメでした”という検証の1つになる。
そして、それが続くことで“誰か”が正解にたどり着く。新薬の開発って、そういうものの積み重ねなんですよ。」

新薬の開発って一言にいっても、こんなに奥深いものだったんですね———。

「もちろん、やりがいもあります。
こういう地道な作業って日本人得意だと思うんですね。『この人のために』とかって、そういうの大好きじゃないですか、みんな。」

と、笑う藤本さん。

「『この人のために』っていうのは、製薬企業に勤めてる人のみならず、たぶん薬剤師さんもお医者さんも、みんな同じ気持ちなんじゃないかなって、私個人としては思っています。ヘルスケア産業に関わってる人たちが頑張ろうと思える意味って、『人のため』に通ずると思うんですね。」

想像しただけで、泣きそうになります。
例え勤めている間に新薬を生み出せなくても、誰かを治すために研究を続けているんですね…。「俺の屍を超えていけ」、じゃないですけど。

「だから本当に、究極の楽天家じゃないと研究者になれないと思います。」

20年近くも研究してても見つからないかもしれないって考えるともう…。涙ぐむ編集部一同ですが、箕部さんは明るくお話ししてくださいました。


「最初から最後まで全部1人でやるのではなくて、バトンのように渡していくんです。みんなが自分の担当分を次の人に渡していく。会社の中でも日々こうしてリレーが続いていくんです。」

「そして、会社の中でリレーになりながら、今度は外の人とも連携していく。治験とかはまさにたくさんの人の力を借りるフェーズですよね。そうなると、もう本当に多くの人———患者さんとか医療関係者含めみんなで、一緒に手を繋いで、“チームで進んでいく”という形になっていきます。」

チームワークというか、みんなで作っているという意識があるからこそ、続けられるのかもしれませんね。次の人へ、という前後のつながりだけではなく、横のつながりがあるからこそ、ようやく実ることなのかもしれません。

「やっぱりね、治らない病気ってまだまだ存在してるんです。そういう患者さんって、希望が無くなるんですね。飲む薬すらなくなる。
その時に新薬メーカーが、ずっと研究を続けていれば、希望になると思うんです。そして、新薬開発が進んでいけば臨床試験になり、その患者さんは治験にエントリーできます。新薬が世に出るかどうか、たとえシビアな条件だったとしても、他に選択肢がなくなった患者さんにとっては希望なんですよ。
だから、我々新薬メーカーはずーっとやり続けなきゃいけない。そう思っています。」

薬剤師に向けた「くすりの部屋―クスリウム」とは

最後に、薬剤師さんに向けて「くすりの部屋―クスリウム」についてお伺いしました。

「『くすりの部屋―クスリウム』では、薬になるまでの過程、なってからどうなっていくのか、あと、最新はこういうふうになっているんだという情報がわかるので、『自分が過去に学んできたことを復習しながらアップデートする』ということを子どもと一緒にできるのが、この科学技術館の強みかなと思ってます。」

「あとやっぱり、お薬は適正に使っていただくのはすごく大切じゃないですか。
薬剤師さんはそれをユーザーである患者さんにたくさん説明してきたと思うんですけど、『くすりの部屋―クスリウム』にはそういう用法用量について理解していただくためのコーナーもありますので、そこも素材として何か役に立つかもしれません。」

「1個の画期的な新薬というのは簡単に出来るものでは全然なくて、車でいうとハイブリッドエンジンができました、水素エンジンができました、っていうくらいの大きなイノベーションなんです。そこら辺は薬剤師の仕事っていうのも含めて、本当に希望を持てるところかなと思います。」

「まさにそういうところに新薬作りの素晴らしさや可能性があるのだと思います。
薬剤師の勤務先は病院や薬局など色々あると思うんですが、“薬を作る”という仕事にも興味を持ってもらえたらな、と思います。」

そういって、熱く語るお二人の目は真剣そのものでした。

今回インタビューさせていただいた「クスリウム」は、薬剤師が普段何気無く扱っている薬ができるまでの過程を展示しています。
薬学部時代に教科書から習ったことも日々変化を続けていきます。
ご自身の知識を振り返る機会にもなりますし、子ども目線を大切にして作られた施設なので、小さいお子さんと一緒に見に行くのも楽しいかもしれません。
また、一度訪れたことのある方も今回の記事内容を知った上で再訪していただきたいなと思います。

編集部は今後もくすりにまつわる施設の良さをどんどん紹介してまいりますので、ぜひ引き続きご愛読いただければ幸いです!

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